高機能を、エレガントに。新時代のスーツを創造する
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高機能を、エレガントに。新時代のスーツを創造する

ポール・スチュアートの新コレクション“STUART'S TRAVELER”のスーツは、出張を快適に過ごすための軽さや機能性と、本来のドレッシーなルックスを巧みに両立しています。相反する要素をいかにして両立させたのか? 野田 仁デザイナーが語ります。

Photo. Atsushi Ueno(Le 1er Juin) / Text. Daisuke Hata / Edit. Pomalo Inc.

2012年よりポール・スチュアートを手掛ける野田 仁デザイナー。STUART'S TRAVELERにも彼のアイデアがふんだんに盛り込まれている。
“機能に結びつかないデザインはやらない”が信条。鎌倉をこよなく愛する。

天然繊維を主役にした、かつてないトラベルスーツを

 クラシックであることが信頼につながるスーツの世界においては、劇的な変化というのはあまり起こりえません。しかし昨今めまぐるしい動きがあるのが「機能性スーツ」の分野。旅や出張に特化し、ストレッチ性や防シワ性、収納などの機能を付与して快適性を高めたトラベルスーツは、その代表格です。
 2017年春夏スタートの“STUART'S TRAVELER”も、ビジネストリップを想定したライン。しかしそのスーツ・ジャケットは、世間一般のトラベルスーツとは一線を画す個性を秘めています。目指したのは、ドレッシーな構築感と機能性の両立。ポール・スチュアートはこれの実現のために、糸の開発から着手しました。経緯について、野田デザイナーは次のように語ります。
「従来のトラベルスーツ・ジャケットは、シワになりづらく扱いも容易な合成繊維を用いたものが中心でした。でも、それでは見栄えを犠牲にしてしまいますし、伸縮性を得るためにポリウレタンを使えば、耐久性にも問題が出ます。それではポール・スチュアートの美意識や信条にそぐわない。あくまでも天然繊維を主役とし、糸の“スペックを上げる”ことで軽量化を図ったり、防シワ性などの各種機能を付与することはできないか?というのが開発の原点にありました」。
 スペック向上のために白羽の矢を立てたのは、世界に誇る毛織物産地、尾州のファクトリー。二人三脚での生地開発が始まりました。

STUART'S TRAVELERのスーツは、毛芯もパッドもないのに構築的な仕立て。適度なストレッチ性も備えていて、身体の動きへしなやかに追従する。着心地は極めて軽やかだ。

生地のスペックを高め、毛芯やパッドを省く

 STUART'S TRAVELERのスーツにはさまざまな生地が用いられていますが、多くに共通する特徴は「撚糸(ねんし)」です。糸の撚りを強めたものを強撚糸と呼び、この糸で織った生地はハリコシが強くなる。複数本を束ねれば、さらに強くなります。

「生地のハリコシが強ければ、本来据えるべき毛芯やパッドを省略しても構築感を表現できます。副資材の役割を生地に持たせるイメージですね。STUART'S TRAVELERのスーツは、毛芯もパッドも、裄綿も省略して軽さをとことん追求していますが、それでも構築的に見えるのは、撚りでスペックを高めた生地の賜なのです。もちろん強撚にすればそれでよいというわけでもなく、あまりにガチガチにすると今度は風合いや物性が悪くなってしまう。バランスにはとにかくこだわっています」。

ラッセル編みはクラシカルな経(たて)編の一種。編機が残っているファクトリーは、古くからの生地の名産地、尾州でも数少ない。

心地よさへの新たな挑戦。“ラッセル編み”のスーツ

 秋冬のコレクションでは、布帛ではなく編地を用いてストレッチ性を持たせたセットアップスーツも新たに展開。写真上のストライプスーツもその1つで、素材にはクラシックなバスクシャツなどに用いられる編み方“ラッセル編み”の、表情豊かなウールを使用しています。
「ラッセル編みはニットですが組織が布帛に近く、スーツにも応用できるのではと思いまして。伸びが心配でしたが、尾州のファクトリーに聞くと、日本の繊維業がもっと活発だった時代には伸びを抑える特殊な編み方があったというのです。幸いにもその技術が尾州のファクトリーに残っていたため今回はそれを応用し、伸縮性を備えながら確かな強度とハリコシを持つラッセル編みの生地を開発しました。ちなみに今日私が着ているスーツは、開発途中のサンプル生地を用いたもの。製品版では糸番手を細くし、ストライプの見え方がもっとシャープになるようアップデートしています」。

スポーツウェアに見られる圧着ファスナーを、右胸の内ポケット口に。 これにより、通常の切りポケットでは不可避な段差によるゴロ付きを抑えることができる。

テーラードにプリウスのようなハイブリッド感を

 素材からして個性的なSTUART'S TRAVELERのジャケットですが、ディテールの個性も負けていません。たとえばジャケット右胸の内ポケット。普通のスーツなら切りポケットとなるところが、圧着ファスナーポケットになっているのです(※エントリープライスのジャケットを除く)。ウールのジャケットにというのは前代未聞の試みですが、野田デザイナーはどうしてもこれをやりたかったと熱を込めます。

「ポケット口にファスナーを着けるのは、防犯や荷物の滑落を防ぐための意味があり、トラベルスーツの常套手段ではあります。でも、普通に縫って付けるとゴロ付きが出てしまいますし、重量も増す。せっかくパッドや芯地を抜いて、より軽やかに快適に、と作っているのにこれでは台無しになってしまいますよね。その点、スポーツウェアで一般的な圧着の手法でこれを付ければ、普通のポケットより遙かに段差を抑えられ快適性が増しますし、軽さも両立できる。表はクラシカルなのに裏はハイテクという、クルマでいうプリウスのような新旧ハイブリッド感も面白いじゃないですか」。

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 ただ、熱による圧着加工は特殊な機器と技術がないとできないため、ファスナーを取り付けるには縫製工場から専門の加工場へスーツを出さなくてはなりません。出してから縫製工場に戻るまでの期間は、じつに一ヶ月。時間は掛かっても最良を目指すポール・スチュアートの信念が、こんな細部にも宿っているのです。

ボタンにはQRコードがプリントされていて、読み込むとSTUART'S TRAVELERの特設サイトにリンクするという遊び心も。

STUART'S TRAVELERコレクションはシャツも展開。ラッセル編みや鹿の子編みのコットン生地を用いて伸縮性を持たせるとともに、通気性やベタつきにくさも追求している。

トラベルスーツのグローバルスタンダードを目指す

 いまだかつてないさまざまな工夫を盛り込み、満を持して送り出されたSTUART'S TRAVELERコレクション。「手応えはあります」と話す野田デザイナーは、今後の展望についても明確に思い描いています。

「本国アメリカのクリエイティブ・ディレクターからも好感触を得ていますし、いずれは世界に打って出たい。国内でも既存マーケットだけでなくセレクトショップで扱ってもらうなど、これまでのポール・スチュアートとは違った形態で展開を進めるつもりです」。

ー仕事をアクティブにこなし、スーツに快適とエレガンスを求めるすべてのビジネスマンに、STUART'S TRAVELERコレクションを。

STUART'S TRAVELER JACKET & PANTS

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 STUART'S TRAVELERのスーツは、価格帯別に2ラインが用意される。写真のセットアップスーツは、フレンドリーな価格と細身シルエットを特徴とするエントリーラインの一着。圧着ファスナーポケットは省略されるものの、ポール・スチュアートが尾州の生地ファクトリーとともにこだわり抜いた、ハイスペックな生地が使用されている。 「表はバーズアイ組織ですが、裏にストライプの糸が配されています。なぜこれを入れているかといえば“伸び止め”の補強のため。肘や膝などが抜けにくくするためです。見えないところにも気を配る、極めて日本的な生地だと思います」(野田デザイナー)

 なお、生地に使用される糸は、ポリエステルの芯にスーパー120'Sの上質なウールを巻き、品のいいタッチと高強度を両立させた特殊なもの。また、通常は両立できないとされる、クリースラインを取れにくくする加工と水をはじきやすい加工の両方を施しているのも特筆点だ。ジャケット5万3000円。パンツ2万6000円。

STUART’S TRAVELER(スチュアーツ トラベラー) 紳士のエレガンスと防シワ・ストレッチなどの機能を両立させたビジネスウエア。2017年春夏シーズンより展開中。セットアップシリーズや、ドレスシャツ、パッカブルコートなどラインナップも充実。

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