男心を掴むネクタイには、職人気質な魂が宿る
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男心を掴むネクタイには、職人気質な魂が宿る

本気でスーツを作り続けるポール・スチュアートにとって、ネクタイは欠かせない“主軸”のアイテムです。今回は自社工場を持ち、企画からデザイン、製造までを手がける『アラ商事』の小高デザイナーが、本国ニューヨークも認めるネクタイへの強いこだわりを語ります。

Photo. Mican / Text. Daisuke Kobayashi / Edit. Pomalo Inc.

今回の取材先は、『アラ商事』の東京本社。1940年創業の同社には、当時からのアーカイブや歴史ある生地・素材が保管されています。


10年来のパートナーとして本国の信頼を勝ち取った


2008年からネクタイ作りを任されているデザイナーの小高さん。伝統的なブランドだけに本国の社長やディレクターのこだわりも強かったと振り返ります。

「年に2回、ニューヨーク本店に出向き、ディレクターとの直接のやりとりをしています。取り組みをスタートした当初は指摘されることが多く、これはポール・スチュアートではない、とか、色や柄がチープに見える、だとか、細かくフィードバックを受けていましたね」

そんな中で、小高さんは自身の目で感じ取ったニューヨークの雰囲気や価値観と、日本人に向けたモノ作りに対する考え方を自分なりに融合して伝え続けていったそうです。

「ポール・スチュアートは変化に富んだり、トレンドを追いかけたりするようなブランドではありません。しかしながら、変わらないものの中に大胆さや自由を魅力的に表現しています。その空気感はやはりニューヨークでしか味わえないもの。現地に行った際は、本店はもちろんのことふらっと街を出歩いてみて、今のベーシックやトレンドを見るようにしています。その上で、製品に落とし込む。ただ、向こうの解釈をそのまま表現してしまうと、日本人に不向きな部分もあります。そこで日本で受け入れられるような色使いやシルエット、素材などを踏まえながら、提案するようになりました」

ポール・スチュアートを象徴する鮮やかなカラーリングや大胆な柄使いも日本向けにモディファイしています。長年のパートナーシップによる信頼と実績の証です。


タイドアップしたいと思ってもらえるネクタイ作りを


クールビズが定着し始めるなど、ドレススタイルの自由化が進む日本のビジネスシーン。ネクタイをしない、という選択も日常で増えているなか、ネクタイの重要性やこれからの在り方について、小高さんはこのように語ります。

「実は春夏の方が売り上げとしては伸びてきているんです。もちろん、ギフトやフレッシャーズなどのイベントがあるという部分も大きいですが、デイリーで使われるお客様が一定層は確実にいらっしゃいます。SNSを見ていても、購入したタイを積極的に投稿している方もいますし。とはいえ、ネクタイの在り方は変わると思います。しなくていい環境になったことで、仕事だからするのではなく、おしゃれで楽しいから(ネクタイを)する。無個性なノータイでは寂しいから、オリジナリティを求めてする。そういう方は洋服のことを知っている、選び慣れている方に多くなってくるはずです。そうなれば、やはりクオリティは当然高くなくてはならない。より作りの良さやデザインのメリハリは必要とされるでしょう」

発色のいいサックスブルーは今年のシーズンカラーとして色を揃えた展開も検討中。ぱきっとした涼しげなブルーが鮮度の高いVゾーンを構築してくれます。

アラ商事が運営する群馬県桐生の織物工場


自社工場を持つこと、これまでのネクタイ製造の経験値があるからこそ、クオリティの高さに対して確固たる自信を感じさせます。

「ポール・スチュアートの作るドレスアイテムはとてもしっかりとした作りをしています。それでいて、決して着にくいわけでなくソフトな仕上がり。そうすると、ネクタイが薄いと負けてしまう。ソフトで軽い仕上がりは意識しながらも、ハリがあってしなやかなネクタイにするように生地の選定から縫製方法、フィニッシュまで工程にはとことんこだわっています。ベースをきちんと据えることで、初めてデザインやシルエットの応用が効くようになります。シーズナブルな色のセレクトや、遊び心の効いたモチーフデザインなどは戻るべき原点やブランドとしての軸があるからこそチャレンジできるんです」

ポール・スチュアートのネクタイの象徴的な技法である「深合わせ」はネクタイの剣先裏側までしっかりと生地を織り込むこと。適度な重みを加えてまっすぐとしなやかに伸びるよう設計されています。


他社にはないと言う膨大な数の生地見本は、1800年代のものなど貴重な財産ばかり。この中から新しい柄を起こしたり、モダンな色合いに染め直してみたりと創意工夫を凝らしながら、常に新しいネクタイへと挑戦し続けています。


スーツの印象を左右する正しいネクタイ選びとは


ネクタイの専門家だからこそ知る、良いネクタイの選び方について聞いてみました。

「そうですね、まず二つ折りの状態で持ってみてください。上の方を持って剣先を下に向けて。そうすると、適度に重みを感じませんか?個人的にはこの程よいずっしり感が大切ではないかと思います。この重みによってネクタイは持っている状態でもストンと綺麗なまっすぐになっています。それが第一条件ですね。次にディンプル(結び目)を見てみます。自分で軽く結んだ状態で立体感のある綺麗な立ち上がりがあるか、そしてそれを解いた時に跡が残っていないか。この辺りを見てもらえるといいかと思います」

これがディンプルです。上質なネクタイは、最も人の目線が集まるこの部分のドレープ感や立体感を大切にすることが重要だと小高さんは力を込めます。


10年間に渡って携わり続けた小高さんだからこそ感じるポール・スチュアートの魅力は、ドレスへの“こだわり”。日本での在り方も踏まえて最後にこう締めくくります。

「これだけビジネスシーンでのカジュアル化が進んでいる中で、ここまでドレスを本気でやっているブランドは少ないんです。伝統を重んじつつ、決してそこだけに頼らない心意気は携わることができて光栄に感じています。実は本国ではポール・スチュアートといえば、ネクタイだと思われているんです。日本でもそう思っていただけるように、そしてその期待に応えられるようなモノ作りをしていければと思っています」


2018年春夏の新作は原色系のソリッドかつ鮮やかなカラーリングに、日本人に合う小紋柄を施しています。特別な日の華やかなVゾーンはもちろん、デイリー使いでも新鮮な印象を表現してくれます。

INFORMATION

アラ商事
1940年に創業したネクタイを始めとするネックウェア専門メーカー。自社工場を持ち、生産から物流まで一貫で行うことができる点が大きな強み。ポール・スチュアートをはじめ、自社ブランドや国内外ライセンスブランドのネクタイも多数手掛けている。

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