スタイルが華やぐ煌めきを。 カフリンクス&タイバーの知られざる世界
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スタイルが華やぐ煌めきを。 カフリンクス&タイバーの知られざる世界

ドレスの個性表現に重宝するカフリンクスやタイバーは、審美眼が試されるアイテムでもあります。ポール・スチュアートのカフリンクス&タイバーの生産を手掛けるメーカー『フカシロ』の斉藤さんと横田さんに、ツウのみぞ知る作りのヒミツをうかがいました。

Photo. Atsushi Ueno(Le 1er Juin) / Text. Daisuke Hata / Edit. Pomalo Inc.

フカシロのオフィスにて取材。フカシロはおよそ10年に渡ってポール・スチュアートのカフリンクス&タイバーの生産を手掛けているパートナーだ。


それは紳士のドレスコードに沿う、硬派なアクセサリー


紳士のドレススタイルにおいて、身に着けることを許される数少ない装身具がカフリンクス&タイバー。簡単におさらいしておくと、前者はダブルカフスやコンバーチブルカフスのシャツの袖口を留める道具で、後者はタイがずれないようシャツに固定するための道具です。

ポール・スチュアートのそれらを手掛けているのは、台東区を流れる隅田川のほとりに居を構えるメーカー、フカシロ。海外に輸出されている国産ライター『イム・コロナ』の生産でも知られ、多彩なブランドのアクセサリーを手掛ける大正13年創業の喫煙具・装身具メーカーです。

さて、カフリンクス&タイバーとひと口に言っても、そのカタチも素材もさまざま。一体どんなものがあって、それぞれにどんな特徴があるのか? 早速、お話をうかがいましょう。まずはカフリンクスから。

「カフリンクスの作り方は大きく3つに分けられます。1つめは、型へ溶かした金属を流し込んで作る鋳造(キャスト)。2つめは圧力で成型するプレス。3つめは切削。ポール・スチュアートでは鋳造とプレスの2種類の製法をアイテムによって使いわけています」(斉藤さん)

幸運の象徴・四つ葉のクローバーを象った、曲線美あふれる鋳造のシルバーカフリンクス。原型はワックス(ロウ)を用い、手彫りで作成。原型を彫るだけで1週間は掛かるという。¥15,000+税。


なめらかな曲線美が魅力の“鋳造”


写真をご覧ください。四つ葉のクローバーを模したカフリンクスは、10年ほど前から変わらず作り続けているポール・スチュアートのロングセラー。緑のエポキシ樹脂で表現された可愛らしいモチーフもさること、注目していただきたいのはなめらかなフォルムです。

「こちらは“鋳造”による、シルバーカフリンクスです。手彫りのワックス原型をベースに石膏の型を作り、そこへ溶かした銀(スターリングシルバー)を流し込みます。この製法の利点は、起伏に富む造形をリアルに表現できることですね」(横田さん)

 ちなみに、スターリングシルバーは“シルバー925”とも呼ばれ、銀が92.5%ほど含まれた合金のことをいいます。残りの7.5%は銅や亜鉛などの金属なのですが、わずかにこれらを混ぜることで強度が向上。宝飾としての美しさと高強度を両立するベストバランスが、銀92.5%というわけです。さておき、シルバー特有の淡い光沢には、自ずと品のよさが滲みます。

エッジがシャープに浮かびあがったこちらのカフリンクスは、プレスによる成形。その煌びやかな表情には、職人による丹念なバフ掛け工程も欠かせない。¥12,000+税。


シャープでモダンな趣の“プレス”


中央に白蝶貝をあしらった写真のカフリンクスは、加工性に優れ強度の高い真鍮に、ロジウムメッキを施したもの。シャープな造形と煌びやかな表情が特徴的ですが、こちらは前述した鋳造ではなく“プレス”によって作られています。

「プレスは金属の板材を型に入れ、機械で圧力を掛けて成形する製法です。それによって凹凸が生まれますので、それを抜き型という型で再度圧力を掛けて切断して取り除きます。エッジを出しやすいのがこの製法の特徴ですね。ちなみに、ロジウムメッキに用いられるロジウムは、金に次いで高価とされる貴金属です」(斉藤さん)

なお、型でバチン!とすればOKだから、鋳造よりもカンタン?と思われるかもしれませんが、単純にそうとは限らないのだそう。

「鋳造は石膏の型に流し込んで作りますが、こちらは金属で金型を作らなければならないので、最初のサンプル作りが大変なんですよ。作れる職人も今では少なく、彼らは“原型師”と呼ばれています」(斉藤さん)

鋳造とプレス、あるいはシルバーと真鍮のどちらがよいか?といったモノの見方はナンセンス。カフリンクス作りのプロは、表現したい造形、表情に合わせて適材適所で使い分けているのでした。

タイバーは実用のギアであり、宝飾でもある

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ここでタイバーへ話を映しましょう。タイを固定するタイバーは、たとえば食事をするときや手を洗うときにあると便利な“ギア”としての側面が強いアイテム。最近はアクセサリーとして“見せる”使い方も浸透してきました。タイのノットをさりげなく持ちあげ、立体的に見せたるのにもこれが重宝しますが————付け方に何か決まった作法はあるのでしょうか? 「スーツの第一ボタンの上あたりに、ちょっぴり覗くくらいのバランスで付けるのが一般的ですが、ルールがあるわけではありませんので、自由に楽しんでいただきたいですね。英国人はあえて小剣だけを留めてタイバーを見せない留め方をするそうです」(斉藤さん)

前出のカフリンクス同様、真鍮をプレスで成形し煌びやかなロジウムメッキを施したタイバー。先端にあしらった白蝶貝がしっとりした輝きを添える。¥8,000+税。

ちなみにタイバーをギアとしてではなく、ファッションツールとして位置付けているポール・スチュアートでは、しっかりタイバーを覗かせたうえで、あえて斜めに挟んで留める付け方を推奨しています。

さまざまなモチーフ、素材、技巧を用いて作られるポール・スチュアートの紳士小物。「デザインの幅広さと遊び心は、ポール・スチュアートならではの魅力です」と横田さん。上段左/¥5,800、中/¥8,000、右/¥5,000、下段左/¥15,000、右/¥12,000(全て税別)。


最後にモノをいうのは、やっぱり職人の技巧


さて、突然ですがクイズにお付き合いください。写真のアイテムのうち、最も“作るのが難しい”のはどれでしょうか?

正解は────意外や意外、右から二番目の白蝶貝をあしらったタイバーなのだそう。

「金属部はプレスで成形するのですが、シェルや石はそういうわけにはいかないので削ってはめ込みます。ある程度は機械で削るとはいえ、サイズも曲面のアールも、金属のベースに合わせてぴったりに削り出すというのは、熟練の職人技あっての世界。だから、海外生産の安価なカフリンクスなどでは、こういうデザインをまずやらない。ポール・スチュアートからはよくオーダーを受けますが、ほんとに難しいんですよ(笑)」(斉藤さん)

なお、最右のタイバーは、ライターの表面加工をしている工場に生産を依頼したもの。
「ダイヤカットを成形できる機械を持っている工場は、とても希少。これが扱えるのは長年ライターを手掛けてきたウチの強みですね」(斉藤さん)

さらに触れると、赤色のエポキシ樹脂をあしらった錨モチーフのアイテムは、ラペルに差すピン。中へフレグランスを染みこませることができ、背部の通気孔からいい香りがほのかに香るというユニークな機構を備えています。

「フカシロが特許を持っているフレグランスピンです。今日私が身に着けている亀モチーフのピンもこれですね」(斉藤さん)

ラペルピンもまた、紳士のドレススタイルに許された数少ない装身具の1つ。せっかく身に着けられるのだから、こうした遊び心のあるアイテムをチョイスするのも粋なのでは?

右:企画やMDを担当する斉藤 徹さん。装身具メーカーを経てフカシロへ入社。バイヤーも手掛け、ピッティにも毎年足を運んでいる。 左:営業部のマネージャー横田 潔さん。老舗の革小物メーカーを経てフカシロへ入社。モノ作りの世界に身を置き続けるベテランだ。

ところで、もし最初の1つ目に選ぶとしたらどんなカフリンクスやタイバーがよいのでしょうか? それについては、

「石のない、ちょっとしたカットの入ったプレーンなものが、スタイルもシーンも選ばないので使いやすいと思います。また、石が入ったものでも白蝶貝やオニキスのものは比較的シンプルで合わせやすいですし、フォーマルな場にもマッチしますよ」(横田さん)との返答。しかし同時に「普段からもっと自由に、気軽にカフリンクスやタイバーを楽しんでほしい」というのが、取材した2人の一番の想いです。

「カフリンクスはダブルカフスのシャツの袖だけでなく、シングルでもコンバーチブルカフスであれば留められます。最近はこのタイプのシャツも増えているので、まだ身に着けたことがない人もぜひ試していただきたいですね」(横田さん)

INFORMATION

フカシロ
鞄や革小物、喫煙具や装身具などの企画・生産を手掛ける、大正13年創業の老舗メーカー。多彩なブランドの製品を請け負っているほか、海外有名ブランドのインポートも行っている。

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