南青山 Brift H「世界一の靴磨き職人のいるサロンで、足もとから大人の佇まいに磨きをかける」
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南青山 Brift H「世界一の靴磨き職人のいるサロンで、足もとから大人の佇まいに磨きをかける」

NYのポール・スチュアートの常連の多くは、足もとの身だしなみまで抜かりない。それは日本でも仕事がデキる大人に共通することだろう。靴を美しく保つことは、その人の印象を向上させることに繋がっていく。もしもいまの靴に自信がなかったら、靴磨き専門店「Brift H」に行くことでスタイルが好転するはずだ。

Photo. Shinsuke Matsukawa/ Styling. Saori Kajitani/ Text.Tomoko Oishi/ Edit.Pomalo Inc.

靴磨き専門店「Brift H(ブリフトアッシュ)」の戸を開けると、そこは店と呼ぶよりは“サロン”が合う空気感。スーツ、ジャケパン、シャツ+ボウタイ、靴磨き職人3名の姿は3様でありながらみなスタイリッシュだ。お客はカウンターに座り、ドリンクを手に職人と談笑しながら自分の靴が磨き終わるのを待つ。

カウンターにいた常連は、「Brift H」に来る理由をこう語る。

「郵送でも済むのですが、わざわざ来るのは話をするため。それだけいいお店なんです。靴と関係のない話がほとんどですよ」

その様子はまるでバーのようだ。クラシックな内装は映画のような雰囲気も醸し、平日に時間をとって立ち寄る人が多いというのも分かる。靴磨きの時間が、自分自身のリフレッシュにもなりそうだからだ。

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左上:「Brift H」は表参道駅から徒歩10分ほどのロケーション。すべて郵送のやりとりも可能だけれど、店舗まで靴を持ち込み相談してから預ける人が多いとか。左下:店舗にはふたつのカウンターがある。カウンターでのサービスを希望する場合は要予約。右上:女性のパンプスのケアも受けつけている。右下:顧客からの委託販売となっているシューズの数々。靴好きの集まる店だけあって、逸品が揃う。

何もかもが、従来の靴磨きのイメージとはかけ離れたシチュエーション。必要にかられて10分でさっと仕上げてもらう靴磨きと違い、「Brift H」でかかる時間は1時間ほど。前者が相場500円なところ、ここは紳士靴なら2,900円からと日本一高額。シニアクラス(+1,000円)、マスタークラス(+2,000円)と職人指名のオプションもある。

20歳の時に丸の内の路上で靴磨きをスタートさせた長谷川裕也さん。もともとファッションが好きでアパレルの会社に勤める傍ら靴磨きをしていた。丸の内の後に品川駅港南口に移ると、雑誌でも取りあげられるようになり長谷川さんの靴磨きには行列ができた。

そんな世界でも珍しいカウンタースタイルの靴磨き店のオーナーは、長谷川裕也さん(33歳)。なんと長谷川さんは、今年5月にロンドンで行われた靴磨きの世界大会でチャンピオンに輝いた職人だ。お金稼ぎのために路上で靴磨きを初めてから13年、世界一の靴磨き職人となった。長谷川さんに靴をきれいにしてもらうことを楽しみにする顧客も多くもつ。

世界一の靴磨きの仕事は何が違うのか? 経験や技術はもちろん、やはり気持ちが重要だと長谷川さんは言う。

「気をはっていないと上の空っぽい磨き上がりになります。靴の仕上がりで磨いた人の精神状態がわかりますね。なんでもそうだと思います。ともすれば靴磨きは流れ作業になりがち。それでも、例えばコーヒーを丁寧に淹れるのと同じで、流れ作業にせずに集中するのが大事です。無心ではなく、靴をしっかり見ながら磨きます。格好つけているみたいに聞こえるかもしれませんが、靴と会話する感じですね」

格好つけにはまったく聞こえない発言だった。きっとプロ意識とはそういうことだろう。美しくなって戻ってくる靴の裏には、職人の繊細な算段がある。

「プラモデルに完成形があるのと違って、靴磨きにはこれでOKというのがありません。終わりがなくてもわーんとしている。光沢の話なので、磨く人のセンスがそのまま表れますね。靴によって光らせる場所も変わります。最後にどれだけ手を入れるかで光り方に差が出るため、ギリギリのところまでやっています」

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現在の顧客名簿は1万人。来店客も多くスタッフ計5名で日々靴のケアを行っている。
左:靴とシューツリーの相性を確認中の山地さん。右:コバを削って整える北見さん。

またアンティーク仕上げや傷補修、色補正なども受け付けている。より靴のことを知ってさまざまなサービスの完成度を上げるため、イギリスにある靴の聖地・ノーサンプトンへ研修旅行に行くこともあるそう。「靴の加工が分からないと直せないので、工場見学に行くんです」とは長谷川さん。話を聞くほどに、業界内では高いと言われる金額も適正価格に感じてくるのだ。

客層は30〜50代のビジネスマンを中心に女性客もいる。女性にはなじみの薄い靴磨きの話も、人の肌に例えると分かりやすい。

「ピカピカにすることが命のアメリカの軍隊式の磨き方だと、ちゃちゃっと汚れをとってから磨きますが、僕たちの場合は汚れをとってから栄養クリームをたっぷり塗ってから磨きます。洗顔後に乳液を塗って、肌をマッサージしてからメイクアップするイメージですね。革への栄養は簡単にいうと水分と油分。革は乾燥すると肌と同じでカサカサになります。だから、水分と油分の入っているクリームをしっかり塗り込むと美しさを長く保てる。5年後10年後の顔に違いがでます」

いうなれば「Brift H」は革靴のエステ。だから1時間という時間がかかる。肌も唇も潤っている方がいいのと同じで、靴も渇いていると寂しい印象になってしまう。ただ、皺は悪いことではないと長谷川さんは話す。

「履いていれば皺はどうしても出てくるけれど、履き皺はむしろ格好いいです。歩いてきた勲章ですからね。人の皺と同じです。歳を経るごとにできる皺や笑い皺ってステキですねよね」

ブラシは日本橋の老舗「江戸屋」に別注した豚の毛のブラシ。黒豚毛を使うところが多いなか、どの色を塗ったかよく分かるように白い毛を使用している。靴クリームは静岡にあるオーガニック化粧品会社にオーダーしたオリジナル品。石油不使用で肌につけてもいいくらいの上質素材からできている。

皺はいかしながらも革に潤いを与えてくれるのは、オリジナルで作った“THE CREAM”という靴クリーム。ボトルには“HELLO my name is THE CREAM”と記され、これはストリートカルチャーでよく使われるデザインだ。路上での靴磨きからスタートした長谷川さんにとって、その原点を忘れたくないという気持ちから入れた文字である。

最後に、これからの夢を聞いた。

「ずっとある夢は、“将来の夢は靴磨き職人”という子供が表れるようにすること。小学校の卒業アルバムのなりたい職業の欄に、クラスにひとりは靴磨き屋さんと書く子がいたらいいですね。靴磨き職人の地位をあげたいんです。あと、海外に出店するのがもうひとつの夢です」

長谷川さんの夢が叶うと同時に、足元まで格好いい男性が街に増えていくはずだ。

RECOMMEND STYLE

ビジネススタイルで目指すは、
足元から都会的な知性のにじむコーディネート
MEN

デキるビジネスマン御用達の店だから、スーツ姿での来店客も多い。そんな仕事に真摯な男性ほど、スーツは悪目立ちせずにほどよくシック。ポイントは、茶色と青の組み合わせ、イタリアで言うところの“マローネ・エ・アズーロ”をVゾーンでとり入れていること。さらに靴もそこの色に合わせ茶色にすれば、熟れ感は抜群。

WOMEN

仕事の合間に訪れるお客も多いという「Brift H」。きちんとしたジャケットスタイルでプレゼンに挑む前に、靴を取りにくるデキる女性もいそうな雰囲気の店である。オフホワイトのセットアップはグレーやネイビーよりも女性らしい柔らかな印象があり、かつ知的さも満点。ここぞの仕事の際の勝負着にもぴったりだ。

SHOP INFORMATION

「Brift H」
ADDRESS/東京都港区南青山6-3-11 PAN南青山204
TEL/03-3797-0373
OPENING HOURS/12:00〜20:00
CLOSED/火曜

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