西麻布 Takumi「ブレない夢をもつ若きシェフが提供する、どこにも似ていないフレンチ」
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西麻布 Takumi「ブレない夢をもつ若きシェフが提供する、どこにも似ていないフレンチ」

今年の2月、西麻布にドレスアップしがいのあるフレンチがオープンした。その店「Takumi」は、プレゼンテーションも料理もひたすら独創的。若きシェフの情熱を体感することとなる時間には、いつもより少しフォーマルな装いがちょうどいい。美食とワインを堪能したあとは、お気に入りのコートを羽織って冬の夜を少し歩くのも悪くない。

Photo. Shinsuke Matsukawa/ Styling. Saori Kajitani/ Text.Tomoko Oishi/ Edit.Pomalo Inc

店の戸を開けると、そこは華も絵もないシンプルな空間。無機質と言ってもいいほど飾り気がない。それでも壁に使用されている木と石は上質で、照明には太陽に光に似た明るさがある。第一印象から、「Takumi」は独特だ。

今年2月にオープンした「Takumi」は、宣伝がなかったにも関わらず、春にはグルメメディアや食通の間で話題になっていた。というのも、一度ここの料理を食べて、オーナーシェフ・大槻卓伺氏の略歴を知ると、これまでのストーリーを知りたくなるからだ。

大槻氏は大阪府出身で、オープン時は28歳だった。神戸大学卒業後、単身フランスへ渡り、計5軒の星つきレストランで3年修行。帰国後、自身の名をつけた店を開業した異色の経歴をもつ。高学歴、日本での修行経験なし、28歳という若さ。そんなキャッチーさに加え、プレゼンテーションのユニークさが食通たちの好奇心をくすぐった。

ランチ(¥7,020)、ディナー(¥13,500)ともに、料理が提供されると同時に意外なものが登場する。料理を構成する素材が入った小瓶と、料理の説明が丁寧に書かれたカードだ。その意図を大槻氏はこう話す。

「フランス料理は往々にしてお皿の上が複雑になるので、色々な横文字の食材を口頭で説明しても伝わりきらないと思いました。うちはコンセプトが“組み合わせの妙を正確に理解し、楽しめるレストラン”なので、そのための手段ですね」

口頭で最初に説明されるのと違い、食べたあとに改めて内容を振り返られるのが面白い。“美味しい”と感じたあとの方がより知識を吸収できる。また、素材が目に見える形で置かれるので理解が早い。カップルなら会話のネタにもなるし、ひとり客なら充実した間もたせとなる。

もしも興味がなければ、ただ読まなければいい。押しつけではなく、選択肢はあくまでお客にあるのだ。説明の間に料理が冷めることがないというメリットもある。

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左上:カボチャのポタージュにはブーダンノワールと梨のピューレ、フォアグラのフラン、クレープシュゼット、ナツメグと牛乳の泡が合わせられ、ひと皿めから尋常でない手間のかかりよう。左下:アーモンド風味のバターソースを添えたホタテのポワレ 右上:エゾ鹿のローストビーフ風。右下:鯛のポワレと鯛骨のソース。隣の串はサフランとレモンの焼きリゾット、ブロッコリーとアボカドのタプナードサラダ。

“組み合わせの妙”を最重視している「Takumi」では、どことも似ていないレシピを体験することができる。例えばメインディッシュの鴨のハンバーグには、フォアグラのかぶら蒸しがのっている。

牛ヒレ肉の上にポワレしたフォアグラと黒トリュフがのるのが定番なところ、フォアグラはふわふわのかぶら蒸しに姿を変えている。ハンバーグにナイフを入れると中はきれいなロゼ色。いつもより優しい風合いのフォアグラが鴨肉の旨みを引き出し、食感の差が強すぎないから一体感がある。時間をかけて煮詰めたであろう鴨のソースも、絶妙なまとめ役だ。

そんなハンバーグも含め、「Takumi」の料理は少しニッチなところを狙ったものとも言える。

「ひとりよがりで押しつけがましい料理はしたくない反面、お客さまに言われることすべてに対応していたらどんどん角がとれて丸くなってしまう。自分のオリジナリティは崩さず、受け入れていただくことが理想です。ただそのやり方には危うさもあって、せめぎ合いのなかで日々料理をしていますね」

オーナーシェフの大槻卓伺氏。初めての料理は小学校低学年の時に作った卵のオムレツ。

素材の味をシンプルに表現する流行りがあるなかで、「手間をかけないと料理じゃない」というのが大槻氏の考え。だから自然と足し算のレシピとなる。メジャーとは逆行しながらも、その料理にはフレンチの面白さを再発見するような味の重なりがある。

なぜ、29歳にしてそこまでの主張をもっているのかといえば、大槻氏の夢が一度として変わっていないからだろう。

「小学生から料理人になりたいと思っていました。子供のころから家で両親に対して作っていて、平日は塾とスイミングに行っていたけど土日はずっと料理。ほかに好きなことがなくて、やり続けたいと思っていました」

ことことと時間をかけて作るフレンチが、大槻氏にとって一番魅力的だった。何冊ものフランス料理本のレシピをすべて作り終えて、次は自分なりにカスタマイズしていたのが高校生のころ。高校卒業後は親の意向もあり神戸大学へ入学。大学に行ったらシェフを諦めて就職するだろうという両親の期待とは裏腹に、夢への決意は揺るぎないものとなった。大学4年間は、フランス修行の地盤を固める日々となった。

「大学時代には、経営学、料理、貯金のためのバイト、フランス語を学ぶ、この4つをひたすらやっていました。家庭教師のアルバイトでフランスへの資金を750万円貯めました。フランスへ行ったら3年は帰ってこないぞという覚悟があったけれど、やっぱり凄く怖かった。だから努力するしかなかったんです」

周りから「アホちゃう」と言われながらも単身渡仏。現地でのつてはゼロ。それでも、自分で稼いだお金と語学力はあった。履歴書を片手にレストランを食べ歩き、美味しいと思った店では「働かせてほしい」とフランス語で直談判。フランスでの食べ歩きの数は80軒以上におよぶ。

「自分に足りないなと自覚があるテーマを重点的に学びました。それを埋めに行って満たされたら次に行くという3年間。フランスは国土が広いので気候もさまざまで、土地ごとのスペシャリテがあるからあえてかたよったところを選びました。同僚とのスーパー共同生活で、プライベートは何もないところもありましたね(笑)。苦労したけれど、想定どおり苦労して、想定どおり辛かった。それでも準備をしていたから心がおれることはありませんでした」

リヨン、トゥールーズ、マルセイユ、パリでの修行を終えて帰国。自分が表現したい料理への技術が身についている自信はあった。その時点で、次の選択肢は独立開業の一択だった。その時28歳。若いようで、準備は少年時代から始まっていた。

「よく高飛車や自信家に捉えられがちですが、自分は決して器用なわけではない。ただ価値観で勝負できる余地があった。幸いその価値観を表現できる機会に恵まれましたが、芽がでるかどうか、いままさに瀬戸際です」

デザートは圧巻の全11種類。テーマは“ケーキ屋さんで大人買い”。トンカ豆風味のミルクレープ、バラのソースが添えられたブランマンジェなど、すべてのデザートがありきたりではない。

パリと同じく、友達すらいなかった東京で店を初めて8カ月。ずっと休みなくキッチンにこもって料理に没頭する。「料理以外に興味のあることは?」と聞くと、「ないです」という返事。そんな大槻氏をソムリエの生谷義清氏がちゃかす様子が可笑しい。

「シェフは根が真面目。女性にうつつを抜かして身を滅ぼして、また復活してほしいくらいですね(笑)。ただ、そのポテンシャルはあるので大丈夫でしょう」

もちろん、大槻氏の料理に関しては「緻密さに驚いた」と美味しさに太鼓判。要素が多めの料理を包括的に包み込む、クラシックなワインとのペアリングを提案している。そのワインを挟むことで、緻密に編まれた味にゆるりとした遊びが入る。実は大槻氏自身はワインを飲まないけれど、不思議とその料理はワイン好きが好む味わいだ。

自分らしい料理を貫く気持ちは、これからもブレない。「Takumi」では、流行りのビストロとも王道のフレンチとも違った食体験を味わうことができる。いつものディナーより少し値が張ったとしても、その世界観は未知の刺激を与えてくれるはずだ。

RECOMMEND STYLE

卓上のフレンチをさらに美しくみせるような、シックなデートスタイル
MEN

羽織るだけでドレスアップできるグレーのチェスターコートの下は、同系色のグレースーツ。料理によって卓上が華やかになる「Takumi」では、装いは少しシックなくらいがちょうどいい。コートもジャケットもラペル幅は主張しすぎないほどで、全体が控えめだからその分Vゾーンのタイの藍色が際立つ。インナーに白いニットを入れことで印象を柔らかくしたのもポイントだ。

  • COAT ¥89,000 (+TAX)
    JACKET ¥49,000 (+TAX)
    SHIRT ¥26,000 (+TAX)
    VEST ¥19,000 (+TAX)
    TROUSERS ¥23,000 (+TAX)
    TIE ¥15,000 (+TAX)
WOMEN

コートもドレスも、すとんと落ちるようなシンプルなシルエット。その分、胸もとをファー、パール、スカーフでボリュームをだして特別感を演出。淡いブルーのドレスはウォッシャブルの優れもの。女性らしいパステルカラーとしなやかな質感で、白いクロスのフレンチにも見合うフォーマルさも合わせもつ。髪をきゅっとタイトにまとめれば完璧!

  • COAT ¥190,000(+TAX)
    DRESS ¥66,000(+TAX)
    BAG ¥26,000(+TAX)
    SCARF ¥15,000(+TAX)
    NECKLACE ¥24,000(+TAX)
    TIPPET ¥46,000(+TAX)

SHOP INFORMATION

「Takumi」
ADDRESS/東京都港区西麻布1-11-10 ビルマーサ1F
TEL/03-6804-6468
OPENING HOURS/11:30〜15:00/18:30〜23:30
CLOSED/日曜

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