-サンヨーソーイング福島工場製スーツ-
-サンヨーソーイング福島工場製スーツ-
一点一点、思いを込めて生み出される。
その拘りと美学

 

ポール・スチュアートのスーツはどのようにして生まれているのだろう? そんな素朴な疑問から、私たちの足は自然と福島へと向いた。
福島県福島市を拠点とするサンヨーソーイング福島ファクトリーは、日本国内では希少な1964年創業のスーツ・テーラードジャケット縫製工場。
伝統的な総毛芯仕立てのスーツから、アンコン仕立てやジャージ素材といった近年の多様なニーズにも応えながら、既製服とパターンオーダーの生産も請け負う希少性かつ懐の広さも魅力だ。
伝統と伝承が脈々と受け継がれる現場に足を踏み入れて感じたことは一つ一つの工程を丁寧に行なう愛しみの精神だった。

 

 

裁断 裁断

 

裁断は、生地が工場に納品されてから直ぐに行われるものではなく、縮絨リラックス→検反→24時間放反の工程を経て成される。 布地の地の目を整えて、形にした際の歪みを無くすのが目的だ。
当工場の裁断機は既製用とパターンオーダー用の二種類が存在する。一枚一枚のパターン(型紙)を手作業で並べて機械裁断されるが、既製用は数着分の裁断を一度に行なうのに対して、パターンオーダー用は当然のことながら一着ずつとなる。無地と柄によっても裁断時間は異なる。無地は約1100秒、ストライプは約1380秒、チェックに至っては約2300秒の時間を要する。二人がかりで丁寧に柄を揃える様は神秘的な儀式のようにも見える。

 

ダーツアイロン ダーツアイロン

 

前身頃はスーツの顔を作るうえで重要な工程。前身頃には二つしかない胸ダーツと脇ダーツにアイロンを丁寧に行ない立体的に作り上げていく。一枚の布地が巧みなアイロンワークによって膨らみを得られていく手の技はまるで錬金術師のよう。

 

芯据え 芯据え

 

毛芯と表地をしつけミシンで縫い付ける、スーツの完成度に一番影響を及ぼす工程。スーツの顔の一つである胸のボリュームはこの芯据えの出来次第で決まる。リズミカルに刻む特殊ミシンの音が何とも耳に心地よく、期待感も膨らむ。

 

加湿BOX 加湿BOX

 

縫製工程の途中に、この加湿BOXは要所に登場する。工程上、外気に触れてきた布地を70~80%の湿度が籠ったBOXに20分程度放置して布地を再度安定(リラックス)させることが目的だ。布地が乾燥している状態で縫製をすると布地が不安定になり、型崩れや縫製不良の原因を誘発する為、しっかりとリラックスさせてから縫製工程へと戻っていく。特に芯地を取り付ける前でのこの工程は重要で、リラックスされた布地に芯地を付けることで雨の日でも型崩れしないスーツが出来上がる。まさに布地やスーツへの愛情を感じる一工程だ。

 

返り線テープ吊り 返り線テープ吊り

 

胸のボリュームを出す工程の一つとしての男性的なフォルムを出す為の隠し味。胸のボリューム・丸みを出す為に上方向につまみ、ラペルの返り線を吊ってボリューム・丸みを出す。これが出来ないと平面的になり、美しさに欠けるスーツになってしまう。

 

八刺しミシン 八刺しミシン

 

ラペルと毛芯を縫い合わせる工程。ラペル裏からラペル返り線裏にかけてポツポツと細かな縫い目が見えているのがこの八刺しミシンによるものだ。スーツの顔を決定づける最重要ポイントであるラペルの立体的なロール返りは八刺しによって決まる。古くからのテーラーは手縫い作業によって行われたこの工程は機械になってもその重要性は変わらない。
余談ではあるが、この八刺しミシンは30年以上前に製造された旧西ドイツ製のものを今でも現役使用されている。

 

肩地縫い 肩地縫い

 

肩線は、前身頃に対して後身頃が通常1.0cm~1.2cm長く設計されている。人体は胸巾より背巾の方が広いことと、日本人特有の「前肩」と呼ばれる、腕が欧米人と比較して前側に付いていることがその理由だ。張り出した肩甲骨周辺をカバーする丸みも同時に生まれる。着心地を大きく左右する肩部分にダーツを入れずにイセ込を入れながら縫い合わせる。
それを特別な器具もなく縫ってしまう職人技は、まさしくプロ中のプロの証。

 

肩割アイロン 肩割アイロン

 

縫い目を割って手作業によるアイロンワークと高い圧力の機械アイロンでイセ込をころす(※アイロン熱と蒸気、圧力で馴染ませること)。これでウールが元に戻ろうとする反発効果を起こさせないようにする。古くからのテーラーはもっと重いアイロンで焦げる寸前まで行なう。そのくらい行うとウールは元に戻ろうとする力を失う。

 

衿つくり~衿付け 衿つくり~衿付け

 

衿は平面の布地を丸くしていかなければならない。衿表と衿裏(地衿)の長さや形状は必然的に変化する。衿つくりにおけるアイロンワークは、地衿に使用するカラークロスと衿をしっかりと固定し、イセ込を入れて馴染ませるためにアイロンでのクセ処理を丁寧に行なう。「衿をころす」と呼ばれる工程だ。
首が衿に沿うようクリーズライン(上衿返り)が伸縮するように作られる。 衿付けは交差するように縫われている。左右対称の美しい上衿にするために、一気に縫うのではなく中央から止めて左右へ縫っていく。上衿は狭いパーツの中に沢山の他パーツが重なり合う。それらがずれないようにセットするために固定する縫製工程は驚くほど多い。
まさしく細部に神は宿る。

 

中間検査 中間検査

 

検査は三回に分けて行われる。

一回目は前身頃が完成した後、ラペルと身返しが縫い合わされた状態でウエスト線位置にメジャーを当てて、多くの工程を経た布地に変化変形が成されていないかを確認しつつ、次の工程に不備がでないよう前身部分の仕上がり寸法を厳守する。
二回目は衿付けまで行なわれた身頃が完成した後、ここでは主に肩巾をチェック。次の袖付けや裄綿付け工程に向けて、製品になった際に仕上がり寸法の許容範囲を越えないようにする。
三回目は最終検査。工程が全て完了した製品をチェックする。倉庫内に検査場があり、外観や寸法はもちろん、検査をする際出来るだけ店舗と同じ照明に当て、店頭でどう見えるかも含め検査を行なう。

 

袖付け 袖付け

 

袖付けの繊細な工程はコンピューター制御のミシンで縫い合わされる。アームホールをセットして大きな円(円周約55cm)のホールを縫うには特殊なミシンが必要。それにより安定的な膨らみが出る。その膨らみ(イセ)が出来ないと平面的で袖巾の狭い着づらいスーツになってしまう。袖付けの際、イセ込分量の多い袖は工場の技量が問われる程。

 

プレス~仕上げアイロン
プレス~仕上げアイロン
プレス~仕上げアイロン プレス~仕上げアイロン
プレス~仕上げアイロン
プレス~仕上げアイロン

 

製品加工工程が完了すると仕上げが行われる。当工場では様々な用途に合わせたプレス機を用いる。素材に応じて温度や蒸らす時間をプログラミングされた人体プレス。肩の丸みに合わせた肩型プレス。衿登りを決める衿プレス。ラペルのエッジを決めるプレス。そして最後は手作業による手持ちアイロンだ。細やかな気配りにより美しいスーツが仕上がっていく。

 

袖付け 袖付け

 

人々の手間と時間が幾重にも重なり合って生まれたモノは美しい。

愛着の湧くスーツを是非とも貴方に届けたい。