2021.11.12

ニューヨーク通信 Vol.5 見上きよみが語って巡る「NYCバーチャルトリップ」~アップタウン編~

 

しばらく行けていないけど、大好きな街の、大好きなあの店は今どうなっているのだろう?――ポール・スチュアートのメンズディレクター鴨志田康人の「ダウンタウン」に続いて、ウィメンズディレクター見上きよみが「アップタウン」をご紹介。ニューヨーク通信で、NYの今を伝えるNY在住の鈴木夫妻のリポートと一緒に、「NYCバーチャルトリップ」をお楽しみください!

Photo. & Text. Fumi Suzuki / Satoshi Suzuki, Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

初めてのNYで感じたのは、「東京より都会に来てしまった!」

――鴨志田さんのダウンタウン編はよく読まれていて好評ですが、見上さんはNYアップタウンを案内してくれます。

見上きよみ(以下、見上) ダウンタウンも大好きですが、NY出張はポール・スチュアートのあるマディソンアベニューからスタートです。ラルフローレンやウィリアムズ・ソノマ周辺はドライビングシューズに軽いケープを羽織ってショッピングするアップタウンの人々が行き交って、ダウンタウンとは違う空気感。ポール・スチュアートのお客様にもお馴染みのブランドが軒を連ねるアップタウン・マディソンをご紹介します。

――見上さんが初めてNYへ行ったのはいつ頃ですか。

見上 1988年頃ですね。ユナイテッドアローズ創業の準備期間中に、アメリカに行ったことがない私と鴨志田さんを含む4人と重松社長(当時)でNYからLAまでのアメリカ出張が初めてのNY訪問でした。あの頃は出張というと必ずヨーロッパだったので、「アメリカってオシャレではないでしょ」と勝手な先入観がありました。

――そうですよね。当時のセレクトショップはヨーロッパ志向でした。

見上 JFK空港に下りて、鴨志田さんとタクシーに同乗して、空港からマンハッタンに入る橋を渡るときに目の前の風景に唖然として顔を見合わせたことを思い出します。2人とも東京生まれなので、「東京より都会に来てしまった!」という衝撃がすごかったですね。「NYってすごいな、どうして今まで来なかったんだろう」と思いました。

――見上さんはパリにも住んでいたのに、衝撃を受けたんですか。

見上 ヨーロッパには東京以上の都市はなかったですしね。2年間パリに住んでいましたが、最初に留学したのがNYだったら日本に帰って来なかったかも知れません(笑)。それぐらい好きな街です。いろんな人がいて、自分もすぐそこの一人になれる感じがします。アメリカはヨーロッパに比べると包容力がありますね。手を広げてくれる大きさを感じます。

 

『Blue Tree』1283 Madison Ave
日本にはない感じのパリっぽい雰囲気のセレクトショップ

――写真を見ると、間口が狭くて通りに馴染んでいるパリにありそうな外観ですね。

見上 私はNYに行くと、『Yura on Madison』(1350 Madison Ave)というカフェまでバスで上っていって、そこからマディソンアベニューをジグザグに歩くコースが好きです。下りてくる途中、最初に入るのがこの『Blue Tree』で、気になってフラッと入ったら可愛くてお気に入りの店になりました。

――どんな感じの店なんですか。

見上 間口が狭くて奥が広い店で、家のような造りです。1階は手前にアクセサリー類がきれいに並んでいて、奥に進むとステーショナリーや人形、ジュエリーボックス、花瓶など、心踊る雑貨のコーナーがあって、プライスも様々ですごく楽しい店です。店の中の階段から2階に上ると洋服があって、ヨーロッパのブランドが並んでいます。

自分や友人へのお土産探しにぴったりの店で、金の玉縁で飾られた黒いベルベットにスパンコール刺繍のブラックスワンが可愛らしいコスメポーチは今も愛用中。日本にはない感じのセレクトショップですね。

 

『Blue Tree』は、元女優のPhoebe Cates Kline フィービー・ケイツ(夫は俳優 Kevin Kline)が、2005年秋にオープンした店。地元住民のみならず、世界各国からの人々に支持され続けている。

また、見上さんがよく行かれていたアップタウンのマダムご用達ブティック『Otte』のMadison Ave店はすでに閉店していて、『Clic』(1242 Madison Ave)をご紹介。

『Clic』は、元スタイリストで、人気ショップ『Calypso』の創始者 Christiane Celleによる、ファッション、ライフスタイル関連のセレクトショップで、この店以外にニューヨークに6店舗、CA、St. Barthなど計11店舗を展開している。

 

 

『E.A.T.by Eli Zabar』1064 Madison Ave
赤いTO GOカップが可愛い、気取っていない、飾らない店

――Eli Zabar’s(イーライ・ゼイバー)」って、スーパーマーケットですよね。

見上 私が必ず行くのはイートインとテイクアウトができる「E.A.T.」で、近所のニューヨーカーがコーヒーを買ったり、気軽なランチを楽しむ店です。ショップロゴや、カップに使われている赤が、気分を上げてくれます。

――見上さんはどんな風に使っているんですか。

見上 日本へ帰る日、空港に向かう途中に、店の前にタクシーを待たせて、機内食代わりのサンドイッチを買います。

――カッコイイ!

見上 すぐ先に、同じ系列のおもちゃ屋さんがあって、そこで小さな子供連れのお客様に会うのですが、子供たちのファッションがそれはそれは可愛らしい。
ショップや商品を見るよりも、そこにいるスタッフやお客様のファッションを見る方が、私にとってはるかに刺激的で、ベーシックアイテムをさりげなく着こなすニューヨーカーは素敵です。

 

 


1973年にオープンした、Eli Zabarによる最初のグルメフードショップ及びカフェ。アッパーイースト近辺で数店舗展開している。週末ということもあり、途切れることなくお客が訪れていた。店の前に設けられた席では、テイクアウトを楽しむ人々で賑わう。

 

『Via Quadronno』25 E 73rd St
略して「VQ」。セントラルパークに近い、セレブご用達のレストラン&パニーノテーカ

――オープンスペースがたくさんあって、なんだかカッコイイお店ですね。

見上 『Via Quadronno(ヴィア クアドローノ)』も必ず行くレストランです。コロナ禍でストリートにテントを張っているのは初めて見ましたが、店内の細長いカウンターを抜けると奥にテーブル席があり、おしゃべりを楽しむマダムや、家族でランチをとる人々でいつもいっぱいです。「VQ」の話をNYのクリエイティブディレクターのラルフ・オリエンマにしたら、彼は近所に住んでいて、「僕のアイスクリームの場所だよ」と言っていました。

――見上さんのオススメを教えてください。

見上 パニーニの種類がたくさんあって、メニューを見ると美味しい組み合わせしかありません(笑)。特に私が好きなのは、「Bip-Bip(Bresaola,Goat cheese, shrimp, Rucola, Fine Herbes&Pink Sauce)」というパニーニで、思い出すだけで美味しそう(笑)。塩味が強くて味にパンチがあって、これを食べると「NYに来たね!」って思えます。日本では食べられない味ですね。

コロナ以降の街の大きな変化のひとつ、カフェやレストランの外に並ぶ屋外席の光景が日常となった。屋外席もダウンタウンエリアと比べると、ゆったりとしたスペースの使い方で、高級感を漂わせる造りが多い。店内飲食は2席のみ。店の前に設けられたヒーター完備のアウトドア席で対応している。

 

『COOPER HEWITT, Smithsonian Design Museum』2 East 91st St
散歩のついでに観に行く感じで、“小ささがちょうどいい”博物館

――クーパー・ヒューイット・スミスソニアン国立デザイン博物館です。何か素敵な展示をしていますね。

見上 仕事でNYに行くと多くて5日ほどの滞在なのですが、ショールームや展示会周りで忙しく、ゆっくりミュージアムを見る時間がないのが残念です。でもこのクーパー・ヒューイットはちょうどいい大きさなんです。元は鉄鋼王カーネギーの邸宅だった建物なので、階段や照明、中庭も素敵。展示にもよりますが1時間ぐらいあれば観られて、私のお気に入りです。

――デザイン系の展示が多いとか。

見上 デザインミュージアムというだけあって、新旧問わず、興味深いキュレーションでピクサーの特集から、切手で作られた巨大な世界地図など、良い意味で身近な感じのする展示が多いので子供連れでも楽しいと思います。今やっている展示も見たいなぁ。

クーパー・ヒューイット・スミスソニアン国立デザイン博物館は、アッパーイーストサイドのミュージアムマイルと呼ばれる地区に位置する、デザインとデザイン史に特化した博物館である。クーパー・ヒューイットは、Andrew Carnegie Mansionと呼ばれるアメリカの歴史登録財に指定された建物にあり、アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが建築した邸宅であった。1899年から1902年に建築された、ジョージアン様式の邸宅の内装を見るだけでも価値がある。

現在、「Susie Zuzek for Lilly Pulitzer : The Prints That Made the Fashion Brand」テキスタイルデザイナー、スージー・ズゼックがファッションブランド、リリー・ピュリッツアーのためにデザインしたテキスタイルの展示。(2022年1月2日まで)

「Nature By Design : Selections From The Permanent Collection 」クーパー・ヒューイットの永久所蔵品から集めた、自然とデザインにまつわるテキスタイル、ジュエリー、家具などの展示。(2022年1月2日まで)

「Underground Modernist : E. McKnight Kauffer」グラフィックデザインのパイオニアである、E・マックナイト・カウファーの150を超えるデザインオブジェクト作品の史上最大の回顧展。(2022年4月10日まで)など、様々な展示が開催中。

クーパー・ヒューイットは、ギフトショップのセレクトも秀逸。カフェも併設されており、庭園を眺めながらくつろぐことができる。11月29日までは入場無料で、時間指定のチケット予約が必要となっている。ワクチン接種者のみ。

 

『Grand Central Terminal』89 E 42nd St
アップタウンから下りてきて、ゴールはグランドセントラル!

――アップタウン編のゴールは、もちろんポール・スチュアートですが、ちょっと左にそれてグランドセントラルです。

見上 グランドセントラルは大きなホールのターコイズの天井が大好きで、『恋に落ちて』などの映画の舞台にもなっているNYの名所ですね。中二階の吹抜から見下ろすと、映画のワンシーンにいる感じがします。食べものの話ばかりですが、コンコースの隅にあるデニッシュドッグは絶品、反対側のパークアベニューに抜けるグランドセントラルマーケットは鮮魚や肉、野菜が並んで、通り抜けるだけでも楽しい雰囲気も好きです。

――今、NYに行けたら、まず何をしますか。

見上 「VQ」でパニーニを食べたいです(笑)。去年の3月に出張に行く予定でしたが、出発の3日前に中止になってしまい、2019年9月から2年ほど行っていません。ブライアントパークやユニオンスクエアなどダウンタウンに向かう途中にもご紹介したい場所がいっぱいです。機会があればぜひ第2弾をお届けしたいですね!

 

上の写真の右側がグランドセントラルで、左側がワン・ヴァンダービルトです。昨年9月に完成したグランドセントラルターミナルに直結する高層オフイスビル「ワン・ヴァンダービルト」に新しい展望台「サミット・ワン・ヴァンダービルト」が10月21日にオープンした。

サミットは、91階から93階までの3フロアに設けられた展望施設で、360度パノラマでマンハッタンの景色を楽しめる。総面積は約6万5000スクエアフィート、高さ1100フィート(335メートル)に位置し、ニューヨーク市内で4番目の高さ。

「ありふれた日常からの脱却」をコンセプトに、全面に鏡や反射パネルが張られたアート・インスタレーションの部屋「Air (エアー)」、床がガラス張りのエリア「Levitation (浮遊)」、草間彌生のアート「Clouds (雲)」の展示スペース、さらにビルのトップまで運ぶ、全面ガラス張りの屋外エレベーター「Ascent (アセント)」など、様々な新感覚の体験ができる。屋外テラスやインドアラウンジでは、軽食やドリンクも楽しめる。

Photo:Summit One Vanderbilt

今後多くの観光客が訪れることが予想され、サミットはニューヨークの新たなランドマークとなることが期待されている。展望台の営業は木曜日~日曜日の週4日。入場料金は39ドル~73ドル(5歳以下は無料)。

Photo:Summit One Vanderbilt