細部意匠からこだわりが伝わるポール・スチュアートの服作り─平尾成志(盆栽師)前編
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細部意匠からこだわりが伝わるポール・スチュアートの服作り─平尾成志(盆栽師)前編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。第11回目のゲストは盆栽師の平尾成志さん。平尾さんは、学生時代に偶然訪れた東福寺の方丈庭園に感銘を受け、その瞬間に盆栽師への道を志すことを決意。今では盆栽の魅力を伝えるべく、国内外を問わず様々な場所でワークショップやパフォーマンスを開催しています。今回はそんな平尾さんに、ポール・スチュアートのウェアを着用して頂き、ファッションへのこだわりや、自身が描く盆栽の未来について伺いました。

Photo. Tatsuya Yamanaka(Q+A) / Text. Kei Osawa / Edit. Pomalo Inc.

ダウンベストはON&OFFで活躍する冬のヘビロテアイテム

― 今回の撮影ではダウンベストをご自身の私服にスタイリングしていただきましたが、普段からダウンベストを着て仕事をされているのですか?

そうですね。特に冬場はそうなのですが、例えば普通のダウンジャケットを着ての作業だと袖までヘビーな作りになっている分、木の中に手を突っ込んで作業をするときにいちいち袖まくりをしなきゃいけなくて不便だったのですが、ベストだとその心配もないっていう。着始めたのはここ2~3年くらいです。作業の効率もあがりましたし動きやすいですし、ファッション的にも、合わせるインナーによって雰囲気も変わるので好きです。ダウンベストは作業中だけでなくプライベートでもよく着ています。

― 普段は、どんな色を着ることが多いですか?

ネイビーやブラックが多いですね。これは僕の全てのファッションに言えることなのですが、カラフルなものは買わないです。特に作業中はあまり強い色見のあるものだと汚れが目立ってしまうので、なるべくシックで汚れが目立たないようにしています。

― 一般的に、盆栽師さんのユニフォームというものはあるのですか?

あると思います。法被を着るところや、甚平、あと作務衣を着ているところが多いです。僕自身も着たことはあるのですが、僕の場合は体型が細みなのであまり似合わないんですよね。日本のそういったユニフォームの類いって、恰幅の良い方が似合いますから。ただ僕がパフォーマンスをするときは、なるべく庭師さんがはいているような股引きや地下足袋、鯉口シャツなどを着てパフォーマンスをするようにしています。

― では、実際にポール・スチュアートの服を着てみていかがでしたか?

質感もそうですが着た瞬間の軽さとか、あとは肌に触れている部分の感触やフィット感など、とにかく快適でした。普段は高級なブランドを着用することがなかなか無いので嬉しかったです。

― ポール・スチュアートのアイテムはスーツなど、昔ながらのテーラーにこだわって製作をしているのですが、今回着用してみて感じるものはありましたか?

内ポケットの大きさや深さ、あとポケットの位置など、細部に渡ってこだわりがあるのは感じました。あとブラックレザーの切り替えを採用するなど、デザイン面もかなりハイセンスですよね。ダウンってもこもことしたヘビーな作りだと思っていたのですが、これはスタイリッシュで軽量、なおかつ保温性も高いので、着こなしによってはインナーとしても使えるなと思いました。

― 普段ご自身で服を選ぶ際に、ポイントをおいているのはどういった部分ですか?

シルエットですね。あと僕は細みが好きなのでフィット感も重要視しています。あと細かな部分でいうと、ジャケットなどを買う際は袖の長さが合わないことが多いので、そこも重点的にチェックしています。

― デザインはいかがでしょう?

どんな服でも柄物が苦手です。というのも顔が濃いと昔から言われ続けているので、これで柄物まで着ちゃうと大変なことになってしまうので(笑)。あとメッセージ性の強いロゴプリントものとかも着ないですね。柄物は着たとしても、せいぜいニットとかで2色で編んでいるものとか、その程度です。

― ちなみに、ポール・スチュアートというブランドはご存知でしたか?

もちろん知っていました。ただイメージ的に敷居が高そうなので、なかなか手に取りにくいというのが正直なところです(笑)。なので、袖を通したのも今回が初めてです。仕事柄、スーツやジャケットを着る機会はそこまでないですが、このサイズ感や着心地であれば、他のアイテムも着てみたくなりましたね。

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今回お伺いしたのは、昨年さいたま市にオープンした平尾さんの盆栽園「成勝園」。入場無料。ギャラリーでは、コーヒーも楽しめます。ADDRESS/埼玉県さいたま市西区西遊馬3131 TEL/048-741-4153

大変だったけど辞めたいと思ったことはなかった修行時代

― どれほどの期間で弟子入りはするものなのですか?

5年間ですね。僕の場合、プラス1年間は専属の管理師みたいな感じで残って、7年目は海外です。

― 修行から卒業するときは、何かきっかけはあるのですか?

5年間の修行が終わると、日本盆栽協会から研修過程の終了ということで一応賞状はいただいて、そこからは自由です。僕が修行していたところは弟子も少なくて、しかもちょうどそのときに加藤三郎という僕の師匠も亡くなられたときだったので、僕としても残ってこの園のために何か残ってできることはないかなと思い、管理師として残りました。

― 盆栽の世界に身を投じるということに当時、迷いはなかったのですか?

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大学生のときに、方丈庭園という重森美鈴さんが作ったお庭をみたときに、日本文化を継承するような仕事につきたいなっていうのはありましたが、盆栽と出会ったのはそことはまったく関係ない人との縁でした。大事なのは、人との縁やタイミングだと思うのですが、僕はその当時盆栽の関係者の方にやってみるかと誘われて「やる」と返事をしたわけです。お酒を飲みながらでしたが、自分の言葉や行動には責任をもちたいというのがあるので、そこに迷いやためらいは一切ありませんでした。

― 実際にやってみて感じたことは?

入る前は、盆栽は伝統ある世界というイメージでした。僕が弟子入りした蔓青園というところも世界でも有名な盆栽園でしたし。面接のときに4代目や5代目にお会いしたのですが、見た目もすごく厳しそうっていう。おそらく一年間は盆栽に触れることはできなくて、毎日雑務の日々なのだろうなって思っていました。でもそれは杞憂でした。実際に蓋を開けてみたらみなさん優しくて、しかも初日からとても高価な木を手入れしなさいって言われて。自分でも「こんなんでいいの?」ってなるくらい拍子抜けしました(笑)。ただ難しいのが、番頭さんという盆栽を管理する職人さんが当時の蔓青園にはいなくて、一年目が終わったときに初めて、盆栽についてのいろはを教えてくれる人がいないということに気づきました。それからはもう自分で勉強をしていくしかないと、頭を切り替えてやっていきました。さらに修行をしている時は、不思議と辞めたいと思ったことは一度もありませんでした。もちろん当時は金銭的な面で苦労をしたり、同級生が会社で出世を果たしているのに僕はまだ盆栽の弟子だったりと、そういう同世代の仲間と比べたときの自分のまだ成長度合いや、修行を終えて独り立ちをするときにどうなるのかっていう不安はありましたけど。
>>中編に続く(12月11日(月)公開予定)


(平尾 成志様着用アイテム)
DOWN VEST ¥43,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

平尾成志 Masashi Hirao
盆栽師

1981年徳島県生まれ。京都産業大学在学中に訪れた東福寺の重森三玲作・方丈庭園に感銘を受け、日本文化の継承を志し、さいたま市盆栽町にある加藤蔓青園の門を叩き弟子入り。 師事していた、故加藤三郎との言葉「盆栽を国内外問わずいろんな人に伝えられる人間になってくれ」を胸に、修業に励み海外へと活動の幅を広げる。現在は、様々な国で盆栽のデモンストレーション・ワークショップやパフォーマンスを行い、平成25年度 文化庁文化交流使の拝命を受け、4か月で世界11ヵ国を周り日本固有の文化である盆栽の美意識とその楽しみ方教えるとともに、盆栽を通じて文化交流を行っている。

・「成勝園」 seishoen.com

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