【MEN】答えはない。終わりもない。ひたすら考え続けること。 ─堀潤(ジャーナリスト)後編
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【MEN】答えはない。終わりもない。ひたすら考え続けること。 ─堀潤(ジャーナリスト)後編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。 第1回は、フリージャーナリストの堀潤さんをゲストにお迎えします。

NHKという官僚的な組織から飛び出し、異端のジャーリストとして活躍する堀氏と、NYにおいて80年の伝統を持つPaul Stuartとのセッション。 そこには一体どのような化学反応が見られるのか――。

ジャケットを“相棒”と呼ぶ堀さんに、仕事のこと、そしていい相棒の条件や選び方について伺うと、堀さんが大切にするもの、そのスタイルが見えてきました。前編・後編、2回に分けてお届けします。

Photo. Keiichi Suto / Text. Shizuka Horikawa / Edit. Pomalo Inc.

― 迷いはなかったんですか?

決めてからはなかったです。朝決めて、局に向かう満員の横須賀線の中で、まず「辞表の書き方」って検索しました(笑)。そしたら、退職願と退職届は違いますって、まず最初に出てきて「え、なにこれ?」ってなって(笑)。退職願は願い。退職届はジョーカーみたいなもので出した途端効力を発揮するってことをまず知って。あぶねー、退職願ってかくとこだったとか思いながら、なんとか椅子に座って退職届を書きました。印鑑もなかったので、会社に向かう途中の東急ハンズに駆け込んで、堀って印鑑を探して買って、すぐさま階段の踊場で捺印したんです。で、上司のところに行って「とりあえずこれを受け取ってください!」って。退職届を出したときの開放感は今でも忘れられないですね。渋谷の放送センターの門を出たときは、空がめちゃめちゃ高く見えて、自由だー! って、思いました。

― 不安はなかったのですか?

なかったんですよね。できることが増えたこと、期待のほうが大きかった。新しいことができるっていう気持ちでいっぱいでした。それまで、派遣切りの話とか、貧困の話とか、虐待の話とか、悲しい出来事ばかりの現場に行って話を聞いているなかで「堀さんは給料がもらえて、ボーナスがあって、明日は次の現場に行く人ですよね」って言われることが時々あって。「伝えてくれるのは嬉しいけど堀さんにはわからないですよね」みたいなのがあったんですよね。だから、そういうときは「そうです。まだ僕らには余力があるので、その余力を生かして伝えるんです」って、いうふうにお返ししていたんですけど、正直、現場と自分のいる場所とのギャップも苦しかったので、そのギャップがなくなったということも嬉しかった。

ちなみに僕、会社辞めていきなり借金まみれになるんです(笑)。退職金が240万円だったんですが、社費留学の280万円の支払いや会社で組んだ車のローンとかもあって、退職金全部突っ込んでもマイナスだったんです。辞めてすぐは家も借りられないし、定期を買うお金もなくて、多摩川を越えればなんとかなるだろうと、とにかく品川までの定期を買ってなんとかやっていました。見かねた友人が自分の実家の3階を貸してくれたんですが、ベッドもないので床に転がって寝る生活を半年ぐらい続けていましたね。

― それでも心が折れることはなかったのですか?

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これからのやりたいことへの思いが圧倒的に勝っていました。これまでにないメディアの在り方をみんなで模索するのが楽しくて。NPO法人を立ち上げたり、映画をつくったり、新しいことの連続だったので。賛同してくれる人や一緒にやろうって言ってくれる人もどんどん出てきて、兎にも角にもいい連鎖が生まれたんです。僕らが育てる市民発信者たちの動画がきっかけで世の中が前進していくのを目の当たりにしたのは成功体験として印象深く残っていますね。
「そんなに働いていつ寝てるんですか?」とよく聞かれるのですが、タクシーに乗った瞬間だったり、トイレで寝ちゃったり、確かにいつも隙さえあれば寝てしまうくらい眠いです。けど、睡眠よりやりたいことが勝っているんですよね。

公共放送人という生き方。

― 世の中を悲観していた青年が、寝る間も惜しんで世の中のために走ってる。 そのパワーはどこから来るのでしょう?

やっぱり、あれですよ。「ありがとうございます」、「助かりました」って言ってもらえること。その連続がパワーだし、モチベーションになっているんだと思います。僕、公共放送人なんですよ。フリーのNHKマンかな(笑)。怠惰で、バカで、しょうもない青年だったのに、カメラを持って、取材に行って、それを伝えることで、ありがとうって言ってもらえる。何も出来ない青年だった僕が(笑)。何より、今こうしている間にも、本当に困っている人がたくさんいるという現実がある限り動かずにはいられない。僕が役に立つ現場ならどこにだって駆けつけたいと思っています。

― そうやって現場の人々に寄り添うことで精神的に辛くなってしまうことはありませんか。

ニュースの発信の仕方を変えたんです。NHKにいたときは、こんなにしんどいこと、辛いことがあるんですよって、ネガティブなインパクトを与えることでみんなが考えてくれるように発信していました。現場は辛い。被災地は涙に溢れてる。そういって涙がこぼれた瞬間を伝えてきたんです。けど、それでいいのか? と。それを伝えて終わるんじゃなくて、「こういう状況を解決するにはどうしたらいいんだっけ? みんなで知恵を集めて考えよう!」っていうベクトルに発信の仕方を変えたんです。そしたら、こんないい取り組みがある、こういう人がいるって、それを解決する知恵や人が集まってきたんです。つい先日も熊本地震から1年間取材している方と恵比寿のお祭の主催の方たちが繋がっていい連鎖が生まれました。「被災者のことを忘れてはいけません。では、次のニュースです」ではなく、「じゃあ、何しよう」っていうのをセットで伝えることが大事だと思っています。

答えはない。考え続けることが大事。

― 堀さんがお仕事で最も大切にしていることは何ですか。

NHK時代の先輩から言われた言葉なんですけど、「寄り添えたと思うなよ」ってこと。「はい、わかりました」っていうけど、「わかったと思うなよ」って。取材したり、人と接していると、一瞬分かった気になりますよね。けど、そこで本当にわかっているのかと自分を疑うこと。わからないって思うことを大切にしています。世の中にある問題ってそんなに簡単に答えが出るものじゃないので、どっちかなあって、どちらが正しいのかなあって考え続けることが大事だなって。

仮に社会のみんなが忘れても、絶え間なく考え続けることを自分に課しています。考えを一つに決めて主張していくと、ただのオセロをやっているみたいになっちゃう。それじゃ議論でもなんでもないですよね。これが世界の真実だって思いこんだ瞬間、それと違う答えを持った人は信用できなくなっちゃうし、自分の敵になっちゃう。相手側からしてもそうですよね。それはいつか対立になって、どちらが勝つかという視点になってしまう。すると、まわりの人は怖がってそのニュースから離れていってしまう。それでは問題解決にはならないですからね。答えはない。考え続けることが大事だと思っています。
—— 今回、堀氏が着用したのは「STUART’S TRAVELER」。通気性や伸縮性に優れ、軽くてシワになりにくいこのジャケットと、移動が多く屋外での過酷な現場も少なくない堀氏との相性のよさは抜群。高機能でありながらエレガンスを演出できるところも“相棒”として完璧なのではないでしょうか。タフでありながら気品も兼ね備える堀氏と、ポール・スチュアートが貫くフィロソフィ。両者には共通するものを多く感じました。


(堀潤様着用アイテム)
JACKET ¥73,000(+TAX)
TROUSERS ¥26,000(+TAX)
SHIRT ¥25,000(+TAX)
TIE ¥13,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

堀 潤 Jun Hori
ジャーナリスト/ NPO法人「8bitNews」代表/「GARDEN」代表
1977年生まれ。立教大学文学部ドイツ文学科卒業後、2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーターや「Bizスポ」キャスターを経て、2012年、UCLAの客員研究員として渡米。日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。2013年NHK退局後、市民参加型動画ニュースサイト NPO法人「8bitNews」を立ち上げる。現在、TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスターやJ-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーターとして活躍する傍ら毎日新聞やananなどで多数連載を持つ。また最近公益事業者を支援するプロジェクト「GARDEN」を立ち上げるなどその活動は多岐に渡る。

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