盆栽の真の魅力を知ったのは、木の声がわかった瞬間─平尾成志(盆栽師)中編
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盆栽の真の魅力を知ったのは、木の声がわかった瞬間─平尾成志(盆栽師)中編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。第11回目のゲストは盆栽師の平尾成志さん。平尾さんは、学生時代に偶然訪れた東福寺の方丈庭園に感銘を受け、その瞬間に盆栽師への道を志すことを決意。今では盆栽の魅力を伝えるべく、国内外を問わず様々な場所でワークショップやパフォーマンスを開催しています。今回はそんな平尾さんに、ポール・スチュアートのウェアを着用して頂き、ファッションへのこだわりや、自身が描く盆栽の未来について伺いました。

Photo. Tatsuya Yamanaka(Q+A) / Text. Kei Osawa / Edit. Pomalo Inc.

職場環境や師匠の存在が、海外での活動を後押し

― 盆栽には流派があるのですか?

流派は無いです。盆栽は成長をし続けても完成がないものですから。枝の作りや鉢合わせだったり、感性の部分にしては盆栽の特色が出てくるのですが、それが必ずしも流派といえるのかといえば、そうではありません。比較してはいけないのですが、生け花だと決まったポジショニングがあるじゃないですか。盆栽で例えるなら、幹の中に枝を置きたいから枝を差すということはできないわけです。流派とかそういう以前に、盆栽師さんって木のお医者さんでなくてはいけないということもあるので、そういった意味で作り手というよりもケアをするという方が強いのかなと思います。

― 盆栽の魅力に気づいたのはどんな瞬間なのでしょう?

弟子のときはなかなかわからなかったのですが、水やりというものを任されるようになってからは自分の中で少し変わりました。その木はどういう状況なのかということを観察し、見極めるということができるようになったときに、本当に木の声がわかるというか、コンディションが手にとるようにわかった瞬間があって、そのときは嬉しかったです。弟子入りして4年目くらいの頃ですね。それまでは盆栽を作るというより、維持するということの方が気持ちとしては多かったのですが、そのことがわかってからは木のコンディションを見極めるということができたので、5年目くらいからようやく作れるような作業を任されるようになりました。

海外に出て改めて知った師匠の偉大さ

― そういう意味では、5年という修行期間はちょうど良かったのかもしれないですね。

そうですね。あと僕が修行をしていた蔓青園が、盆栽を作るような機会に恵まれなかったんです。4~5年目くらいのときに、僕のことを贔屓にしてくれるお客さまに盆栽を買ってもらった際「針金かけをするときは僕を指名してください」ってお願いをして、お仕事をさせてもらっていました。盆栽を作るチャンスが無いから、もう営業ですよね(笑)。そこで僕が上手にできるということをお客さまに認識してもらい、次の仕事に繋げていきました。そういう機会も自分で作らなければいけない環境だったのです。ただ、そういう感じが自分には合っていたので、やりやすかったですね。盆栽に関しては自由な部分が多かったですが、その裏側にある責任もあるわけで、でもそこをちゃんと押さえておけば、自分ならやれるということはわかっていました。

― 失敗したことも?

それはもちろんあります。小さなことから挙げたらキリがないです(笑)。例えば盆栽を枯らしたり、あと高価な古い鉢を持ち運ぶ際に、修復部分を手にかけて持ってしまってそれが割れたりと、そういうのはいっぱいあります。ただ鉢を割ったときに学習しているので、ヒビの入った鉢は持った瞬間にわかるようになりました(笑)。失敗の後に神経を研ぎ澄ますということが重要なのでそれを念頭に置き、つねに気を抜かないようになりました。

― 修行後に海外に行くことは、以前から決めていたのですか?

僕がいた蔓青園は海外のお客様も多かったということと、加藤三郎が世界盆栽友好連盟というものを作ったこと、あとその加藤からも昔から「平尾くんは海外に合っているよね」っておっしゃっていただいていたので、どこかで行きたいという気持ちはありました。それを決断したのが6年間盆栽業界に携わったことで、この業界全体が盆栽のために新たなことはせず、努力もしていないことを感じたからです。そう思った瞬間、海外とコネクションをもっている方と話をして、次の日にはスペインに行くことを決めました。

― では、海外に行ってわかったことは?

まず蔓青園・加藤三郎の名前が広まっていて、その偉大さを知って改めてすごい人なのだなと思いました。それと当時に、僕が盆栽師として働くことで加藤三郎の名声を汚してはいけないっていうことですよね。そして現地で感じた日本との大きな違いは、日本の盆栽愛好家の方は、自分でわからない部分は職人さんに任せるのが主流なのですが、海外の愛好家の方は全部自分の手でやりたがるのです。

向こうの人の盆栽の楽しみ方は盆栽をいじっているとき、無になれる瞬間だと思うんです。僕が作ったものを買うというより、うちに来て教えてくれという方が多くて。僕はスペイン語もそれほどしゃべれなかったのですが、向こうでは一人で家に連れていかれて、ほぼ無言の状態で、朝からビールを飲みながらひたすら盆栽の手入れをするっていう感じでした。

― 海外で盆栽はどんな位置づけなのでしょう?

日本のカルチャーだからやるということではないですね。中には「鉢の中に木が生えているっていうのは小宇宙で、盆栽を育てるためには自分の精神からクリアにしないと木にうつるから」とおっしゃる方もいました。それって日本のカルチャーというよりも禅の教えと通じる部分がありますよね。だから、禅の一環として盆栽をやっているという方が多いのだと思います。
>>インタビュー前編 細部意匠からこだわりが伝わるポール・スチュアートの服作り─平尾成志(盆栽師)前編

>>後編に続く(12月18日(月)公開予定)


(平尾 成志様着用アイテム)
DOWN VEST ¥43,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

平尾成志 Masashi Hirao
盆栽師

1981年徳島県生まれ。京都産業大学在学中に訪れた東福寺の重森三玲作・方丈庭園に感銘を受け、日本文化の継承を志し、さいたま市盆栽町にある加藤蔓青園の門を叩き弟子入り。 師事していた、故加藤三郎との言葉「盆栽を国内外問わずいろんな人に伝えられる人間になってくれ」を胸に、修業に励み海外へと活動の幅を広げる。現在は、様々な国で盆栽のデモンストレーション・ワークショップやパフォーマンスを行い、平成25年度 文化庁文化交流使の拝命を受け、4か月で世界11ヵ国を周り日本固有の文化である盆栽の美意識とその楽しみ方教えるとともに、盆栽を通じて文化交流を行っている。

・「成勝園」 seishoen.com

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