世界中の人々に、盆栽の魅力を知ってもらうことこそ天命─平尾成志(盆栽師)後編
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世界中の人々に、盆栽の魅力を知ってもらうことこそ天命─平尾成志(盆栽師)後編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。第11回目のゲストは盆栽師の平尾成志さん。平尾さんは、学生時代に偶然訪れた東福寺の方丈庭園に感銘を受け、その瞬間に盆栽師への道を志すことを決意。今では盆栽の魅力を伝えるべく、国内外を問わず様々な場所でワークショップやパフォーマンスを開催しています。今回はそんな平尾さんに、ポール・スチュアートのウェアを着用して頂き、ファッションへのこだわりや、自身が描く盆栽の未来について伺いました。

Photo. Tatsuya Yamanaka(Q+A) / Text. Kei Osawa / Edit. Pomalo Inc.

盆栽を育てるのに大事なのは、目に見えない愛情

― 平尾さんは盆栽のワークショップも開催されています。盆栽師として、参加者やお弟子さんへ教えるときに心がけていることはありますか?

作ることも重要ですが、一番大事なのは木を枯らさないこと。まずは最低限これですね。あとテクニックの面でいうと、自己満足で作るなということですね。木のことをちゃんと理解してやらないといけない。特に海外の人は作り込みたがる方が多いので、1回で強引に完成までもっていこうとするのです。少しずつ根と葉の量を減らしていってというプランニングができない人が多いので、彼らにはとにかく「少しずつ」ということを教えています。

― 平尾さんご自身は、常に盆栽のことを考えているのですか?

そうですね。ただまあ、これからは盆栽をただ作るだけでなく、どう広めていくかということも考えなきゃいけないですし、あとは自分がこれまで盆栽で培ってきたものや、自分これまで出会ってきた人や、見てきた景色、そういうものが僕を作っているものだと思うので、これを色んな人に知って欲しいので、ますます盆栽について考える時間が増えるのだと思います(笑)。

― 初心者におすすめの盆栽は?

よく聞かれる質問ですね(笑)。生命力の強い木もあるのですが、一番大事なことは、盆栽も生き物なので、目があって「家に連れて帰りたい!」と思った盆栽がそれだよと教えています。愛情さえあれば水やりもしっかりやるだろうし、観察もするでしょうから。

― 音楽をかけるなど、環境によって生育が異なると聞いたことがあります。

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それはありますね。ここの盆栽園でもそうなのですが、僕が海外に行ったり、長期で不在にしたりすると、やっぱり木の状態が悪くなるんです。愛情のかけかたと言いますか、別に水をやらなくても触れなくても、一本ずつじっと見ることで波動的なものがやりとりになるような気がします。やっぱりその木を「心配しているよ」って気をかけないとだめです。その人の心配している周波数といいますか、木の方がその辺を敏感に感じ取るのだと思います。

― リラックスする瞬間ってどんなときですか?

それこそ盆栽の愛好家さんと一緒で、ここでうっすらと音楽でも流しながら静かに木と向き合って作業をしているときです。だから僕の場合は仕事をしているときが最も落ち着いているのかもしれません(笑)。

従来にない盆栽へのアプローチは、"盆栽愛"あってのもの

― それは天職ですね。

いや、社会不適合者なだけです(笑)。どうですかね。まあでも、だから天職なのかもしれないですね。仕事というよりは、僕の中で途中から盆栽のことを勝手に天職だと思うようになって、さらに何か宿命も感じて、今度は天命を感じるようになって。やはり回りの方々が僕を引き上げようとしてくれたりするので、僕もこれをまっとうするしかないと思うようになりました。

― 平尾さんのように、天職をまっとうするにはどうすればよいのでしょう?

色々と難しい部分もあると思いますが最低限、仕事に対して誇りさえ持てれば何でも天職になるのではと思います。やっぱり公私混同じゃないですが、プライベートな部分も同じペースというかテンションで仕事ができるようになれば、精神的にゆとりも出てくると思いますから。

― 盆栽業界の伝統を継承しつつ、改革を進める平尾さん。ときに逆風が吹くこともあるのでしょうか?

めちゃくちゃ叩かれていますね。ただ僕がもし盆栽の基礎を知らない人間だとしたら、今ごろ疲弊していると思います。でも僕は業界も知っていて、なおかつこの状況が変わらないということもわかっていますから、そこまで辛くはないです。あと全員が敵というわけではなく、中にはちゃんと応援してくれる人もいますから。一度叩かれたからと言って止めちゃうと「なんやあいつ」で終わるけど、続けていればそれがいつか理解されて、こっちが正しかったと後々言えるようになると思うんです。もちろん、盆栽は歴史ある日本の文化ですから、昔ながらのしきたりなどを重んじることは大事だということは理解しているつもりです。ただ同時に、新たな行動を起こさないとあと30年くらいで日本から盆栽がなくなってしまう可能性もあるのです。

― 平尾さんが思う、理想的な盆栽協会のあり方は?

盆栽が盆栽関係者だけに披露されるのではなく、今まで行けていなかったステップへ行くことだと思います。例えば、ファッションブランドなどとタイアップをして一緒に展示会を開催したり、異業種との文化的なイベントに参加していけるような新しいことを仕掛けていきたいです。そうやって新たな分野で活動できる組織になるのが理想ですね。

― 近い将来に実現させたいことは?

2020年に『東京オリンピック・パラリンピック』が開催されるので、ただの展示ではなく、色々なかたちで関わりたいです。その上で、一方的な文化の発信ではなく、受信者を作って、ちゃんとした文化の交流をしていかなきゃいけないと思っています。そうなったときに僕が今現在やっていることは、絶対に意味のあるものになると思うんですよ。盆栽の手入れと同じで、少しずつ広がっていけばいいですね。

― 伝統を重んじつつも時代の空気を敏感に察知し、つねに革新を遂げ続けているポール・スチュアート。そして盆栽という日本古来の文化を継承しながら、独自のスタイルで盆栽の新たな魅力を広めている平尾成志さん。この両者に共通するのは、服も盆栽も今よりもより魅力的なものにしたいという愛情。時おり冗句を交えながら、終始快活に語る平尾さんの熱のこもったお話を聞いていたら、日本はもちろん、世界中から盆栽が愛される日が訪れるのもそう遠くないと感じました。

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形態回復やクッション性など、優れた機能性を備える『ソロテックス』を使用した生地を採用したダウンベスト。ソフトな肌ざわりや発色の豊かさも大きな特徴です。羊革と合繊を組み合わせた切り替えデザインのベストは、シーズンを通して着用可能であるのみならず、あらゆるスタイルマッチする汎用性が高いアイテム。カットソーやニットとの合わせに加え、アウターのインナーとしても活用できます。


(平尾 成志様着用アイテム)
DOWN VEST ¥43,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

平尾成志 Masashi Hirao
盆栽師

1981年徳島県生まれ。京都産業大学在学中に訪れた東福寺の重森三玲作・方丈庭園に感銘を受け、日本文化の継承を志し、さいたま市盆栽町にある加藤蔓青園の門を叩き弟子入り。 師事していた、故加藤三郎との言葉「盆栽を国内外問わずいろんな人に伝えられる人間になってくれ」を胸に、修業に励み海外へと活動の幅を広げる。現在は、様々な国で盆栽のデモンストレーション・ワークショップやパフォーマンスを行い、平成25年度 文化庁文化交流使の拝命を受け、4か月で世界11ヵ国を周り日本固有の文化である盆栽の美意識とその楽しみ方教えるとともに、盆栽を通じて文化交流を行っている。

・「成勝園」 seishoen.com

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