人との信頼関係を築き上げるために必要なこと。─牛窪 恵(インフィニティ代表取締役/マーケティングライター)前編
  1. TOP
  2. FOCUS ITEM
  3. 人との信頼関係を築き上げるために必要なこと。─牛窪 恵(インフィニティ代表取締役/マーケティングライター)前編
style-session

人との信頼関係を築き上げるために必要なこと。─牛窪 恵(インフィニティ代表取締役/マーケティングライター)前編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。第12回目のゲストは、“草食系男子”や“おひとりさまマーケット”、“年の差婚”などの言葉を世に広めた人物として知られるマーケティングライターの牛窪恵さん。社会の動向を鋭く読み解きながら、知恵を活かし、それをプラスの方向へと転換させるのがマーケティングの仕事です。自身の会社を立ち上げて17年目となる今年。現代に生きる人々の動きを眺めながら、牛窪さんはいまの世の中に何を見出だしているのでしょうか? 彼女の視点を通して、社会の“いま”をすこしだけ覗いてみましょう。

Photo. Kazunobu Yamada / Text. Yuichiro Tsuji / Edit. Pomalo Inc.

相手の心を開くには、「共感力」が大事。

― “マーケティング”とは、そもそもどんなことをするお仕事なのでしょうか?

モノやサービスを売るための仕掛けをつくるのがマーケティングの主な目的です。とくに「調査」では、定量アンケートやインタビュー調査を通じて、社会の動向を読み解きます。そのなかでも私の会社が得意としているのはインタビュー調査のほうで、対象者ひとりにつき大体1時間半から2時間程度の時間をかけて話を聞きます。その人の仕事や恋愛、日常の悩み、「こんな商品があったらいいのに」というニーズなども含めて。そこで得た生の声やデータを分析して、マーケティング活動に活かします。ネットなどで一斉に聞くアンケート調査に比べると時間も手間もかかるのですが、やっぱり生の声を聞くことがとても重要なんです。

― 直接的な会話を通して、人の心の中に潜っていくわけですね。

そうですね。でも、それは簡単なことではありません。恋愛でも、これまでにどんな人とお付き合いしてきて、どうして別れてしまったのか、あるいはいまどんなことに興味があって、何がストレスなのか。そういった心の深い部分にマーケティングのヒントが隠されていることが多いので、それを聞き出すには相手への共感力がないと難しい。人の心を開くには、「この人のことを理解しよう」という強い気持ちが大切です。つまり、対象者との信頼関係を築くことが必要なのです。

― その信頼関係を築くために牛窪さんが大事にしていることはありますか?

pattern_2
まずは自分の言いにくい部分まで開示すること。相手の話を聞くだけではなく、自分は過去にこういう馬鹿な経験をした、こういう悩みを抱えていた、などを伝えるのも、ときには必要です。そしてもっと大切なのは、先入観を持たないことです。見た目や前情報でその人のことを判断しないこと。話す前から「この人はこういう人だ」と決めつけてしまうと、その人の本当の姿が見えづらい。ニュートラルな気持ちで接して、相手の隠れた魅力を掘り起こそうという姿勢で臨むようにしていますね。

自分自身が現場に赴くプレイヤーになりたかった。

― 牛窪さんはもともと大手出版社の編集者でした。インタビューでの共感力は、そのときに養われたのでしょうか?

いえ、編集者時代は作家さんのもとへ原稿を取りに行ったり、編集プロダクションに「これでお願いします」と依頼するような仕事ばかりしていました。共感力といいますか、人の心や行動を読み解く力は、学生時代に養われたのだと思います。大学時代、私は映画学科の脚本専攻だったんです。優れた脚本家は人々の動きをよく観察して、そこから深層心理をあぶり出し、脚本に活かします。例えば、「ひどく神経質な人だ」と表現したいとき、それをナレーション処理するのは安易な手法です。何度も時計を見たり、短い時間でタバコを何本も吸ったり、あっちこっちに目が泳いでいたり、と「動き」で性格や心理を表す。そのためには、普段から人々の動きを眺めながら、心理状態を推測し、事例を蓄積する必要があります。そのせいか「チラ見」が趣味になりました(笑)。あと、私の母がカウンセラーなので、傾聴力に関しては母譲りの部分があるのかもしれませんね。

― 脚本の勉強をしていたというのは意外でした。

父がテレビ局に勤めていて、ドラマのプロデューサーをしていたんです。小さい頃から脚本の仕事に憧れていて、その道を目指していたのですが、私が就職する頃はレンタルビデオの全盛期で、映画業界は斜陽傾向、採用は殆どありませんでした。テレビの世界がどんなところなのかも父の姿からなんとなく理解していましたから、そこに進もうとは思わなかった。でも、書く仕事をしたいという気持ちに変わりはなかったので、出版社に勤めることにしました。

― そこからどうしてマーケティングの道へ進んだのでしょう?

先程も話した通り、大手の出版社に勤めていても自分が記事を書くことは少ないんです。企画を作って、あとは外部のライターさんやプロダクションに仕事を依頼することが殆ど。でも、それは私が望んだ道ではなく、私は自分自身がプレイヤーでありたかった。現場にいたかったのです。世の中って日々変化をしていて、トレンドもスタイルも時代によっていろんな傾向があるんですよね。その変化は現場にいないと掴むことができない。だから私は自分で取材をしたり、インタビューをしたりする道を選んだのです。
>>中編に続く(12月14日(木)公開予定)


(牛窪 恵様着用アイテム)
JACKET (FIRST JACKET) ¥79,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

牛窪 恵 Megumi Ushikubo
インフィニティ代表取締役 / マーケティングライター

1968年東京生まれ。日本大学芸術学部映画学科(脚本)を卒業後、大手出版社に入社。5年間務めたのち、フリーライターとして独立。2001年4月には、自身の会社である有限会社インフィニティを設立。現在、立教大学大学院(MBA)に通学中。トレンド、マーケティング関連の著書も多数あり、『おひとりさま(マーケット)』(05年)、『草食系(男子)』(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。現在は『日本経済新聞』や『婦人公論』に連載するほか、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)はじめ数多くのテレビ番組に出演。12月8日に最新著書『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』を出版。

20 件
ページトップへ