日本人としてのアイデンティティを考えさせられた2017年─牛窪 恵(インフィニティ代表取締役/マーケティングライター)中編
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日本人としてのアイデンティティを考えさせられた2017年─牛窪 恵(インフィニティ代表取締役/マーケティングライター)中編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。第12回目のゲストは、“草食系男子”や“おひとりさまマーケット”、“年の差婚”などの言葉を世に広めた人物として知られるマーケティングライターの牛窪恵さん。社会の動向を鋭く読み解きながら、知恵を活かし、それをプラスの方向へと転換させるのがマーケティングの仕事です。自身の会社を立ち上げて17年目となる今年。現代に生きる人々の動きを眺めながら、牛窪さんはいまの世の中に何を見出だしているのでしょうか? 彼女の視点を通して、社会の“いま”をすこしだけ覗いてみましょう。

Photo. Kazunobu Yamada / Text. Yuichiro Tsuji / Edit. Pomalo Inc.

40~50代の独身女性がいま面白い。

― 牛窪さんの会社は企業からのマーケティングの依頼も受けていらっしゃいますよね。どういった内容のお仕事が多いのでしょうか?

女性に関する内容と、若者に関する内容が多いです。それぞれの分野における商品開発やニーズ調査がメインですね。ただ、私自身はもっといろいろなマーケットを見たいと思っています。落ち着きがない性格で、狭い範囲を深く掘り下げるよりは、自分の興味の分野を転々と研究するほうが好きなのです。「若者からシニアのことまで話せるのは牛窪さんくらいだよね」とよく周りからは褒めていただくんですけど、意識的にそうしているというよりは、興味の対象が次々と移っていった結果です(笑)。

― いまはどんなテーマに興味があるのでしょう?

40~50代の独身女性です。この年代の方々はいま4人中1人が独身で、特徴としては消費好きの傾向にあります。その中には“団塊ジュニア(牛窪さんの概念では、1971年~76年に生まれた世代)”と呼ばれる人たちも含まれていて、人口が2番目に多い世代なのです。つまり、40~50代の独身女性は、ターゲット人口が多く、一般には消費好きで購買力もある。仕事でも、いわゆる「均等法(男女雇用機会均等法)第一世代」が含まれ、可処分所得が高い「バリキャリ」が増えた世代。スタッフとこの半年で、彼女たち34人に一人ひとり深く取材をして、どんなことを考えているのかを研究しました。その内容を本にして最近出版したのです。

― 12月8日発売の最新著書『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』ですね。

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取材して分かったのは、彼女たちは20~30代の時に、いわゆる「だめんず(だめな男性)」に痛い目に遭わされていたケースが圧倒的に多かったこと。だから独身、という女性も多かったです。あとは、自分のこだわりのスタイルを持っている方々も多くいらっしゃいました。ファッションにしてもインテリアにしても、こだわりが強いから、納得いくものがなければ、いま無理に買う必要はないなと「先送り」する。結婚もたぶん同じです。そういった女性たちは、自分のスタイルを磨く、もしくは好きなことに集中するためにお金を使っていることもわかりました。

― なぜそういった女性たちに興味が向いたのですか?

私の会社には40代の女性スタッフが多く、そのなかの3割程度は独身です。彼女たちは高級な薫製メーカーを買ったり、数万円かけて好きな酒蔵に見学へ行ったりしていて、お金の使い方が「男前」です。いまの若い人たちは情報の洪水の時代に育っていますから、ネットなどでリスクを取らない賢いお金の使い方を学んでいるのですが、私が「おひとりウーマン」と呼ぶミドルのおひとり様は、年齢とともにクセのある消費に拍車がかかっている。賢すぎない部分に、どこか人間味というか、惹き付けられるものを感じたのです。

2017年はグローバルな視点で日本という国を眺めた年

― 先程、「興味の対象が次々と移っていった」と話されていましたが、牛窪さんの頭のなかには常に物事に対する疑問符が浮かんでいるのですね。そして、それを突き止めようとする気持ちが働いている。

そうかもしれません。プライベートでも人々の行動を観察して、勝手にストーリーを組み立ててしまうというか、マーケティングしてしまうんです。「この人はどこから来て、何の目的があってここにいるのだろう?」とか、「ここにはたくさんの人がいるけど、それはどうしてだろう?」とか、すぐ想像してしまいます。いつも主人にも呆れられているんですけど…(笑)。

― 少し話が変わりますが、今年も年の暮れが近づいてきましたが、2017年はマーケティング視点で見るとどんな年でしたか?

今年は政治の話題が多い年だったと思います。日本国内では都議選や衆院選など、大きな選挙がありました。また、アメリカではトランプ大統領が政権を握り、世界規模の自然災害や度重なる北朝鮮問題が起こるなど、グローバルな視点で日本を見つめることが多かったのではないかと。そして、私たち日本人のスタイルやアイデンティティはどうあるべきなのか、それを再確認するきっかけを与えられた年になりましたね。

― これから迎える2018年はどんな年になると思いますか?

東京オリンピックの開催に向けて、本格的に動き出す年になると思います。2011年の震災以降、日本人のボランティア志向が高まっているんですが、2020年に日本を訪れる人たちのため、社会のために、自分になにができるのか? ということを日常的に意識するようになると私は考えています。


(牛窪 恵様着用アイテム)
JACKET (FIRST JACKET) ¥79,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

牛窪 恵 Megumi Ushikubo
インフィニティ代表取締役 / マーケティングライター

1968年東京生まれ。日本大学芸術学部映画学科(脚本)を卒業後、大手出版社に入社。5年間務めたのち、フリーライターとして独立。2001年4月には、自身の会社である有限会社インフィニティを設立。現在、立教大学大学院(MBA)に通学中。トレンド、マーケティング関連の著書も多数あり、『おひとりさま(マーケット)』(05年)、『草食系(男子)』(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。現在は『日本経済新聞』や『婦人公論』に連載するほか、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)はじめ数多くのテレビ番組に出演。12月8日に最新著書『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』を出版。

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