理のみならず何でもこなせる。有能なシェフの条件─山下春幸(ウォーターマーク代表兼エグゼクティブシェフ)後編
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理のみならず何でもこなせる。有能なシェフの条件─山下春幸(ウォーターマーク代表兼エグゼクティブシェフ)後編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。第9回目のゲストは、HAL YAMASHITA 東京のエグゼクティブオーナーシェフでウォーターマーク代表の、山下春幸さん。料理技法など、伝統的な日本のスタイルに独自の視点を用い、従来になかった斬新な組み合わせを取り入れた『新和食』を提案している。そんな国内外から高い評価を獲得する、日本が世界に誇る和食界の革命家・山下春幸さんがポール・スチュアートのスーツを着用。スーツへのこだわりや和食の未来に至るまで幅広く伺いました。

Photo. Tatsuya Yamanaka(Q+A) / Text. Kei Osawa / Edit. Pomalo Inc.

食事こそ、最も身近なエンターテインメント

― 山下さんは、すでに3000種類以上のメニューを考案していますが、その発想力はどこから生まれてくるのでしょう?

いつでも常に、です。ただ少なくとも、テーブルの前に座っていては絶対に思い浮かばないですね。料理のこと考えるのであれば美術館に行ったり、公園歩くなど、料理とは関係のない環境に身を置いて発想を転換することが多いです。一時期、全く浮かばないことがあって仕方なく諦めて別のことを始めたら、その途端に色々できてきましたから(笑)。どんなに浮かばなくても、普通に生活しているうちに生まれるものだと思います。

― ということは、常にどこかでお仕事のことを考えているということですよね。では、最もリラックスする瞬間ってどんなときですか?

ご飯を食べているときですね。普段は人に作ることがメインなので、自分が食べるときは楽しく食べたいと思っています。もちろん疲れていて、無言で食べるようなときもたまにありますが、大抵はどんなにしんどくても、ちゃんとした料理をきゃっきゃっと言いながら食べています(笑)。だから、どれだけ空腹でも、近所のファストフード店に入るということはまず無いですし、半径500m以内でどこか美味しいお店を必ず見つけます(笑)。というのも僕は、食事こそ最も身近な娯楽だと思っているんです。映画や旅行は少し時間がかかりますが、食事はそんなことはないですよね。例えばいつもは800円のランチだけど、今日はちょっと奮発して1500円のランチを食べてみたりすると、ちょっと気分があがりますよね。その数百円で得られる幸せといいますか、そういう些細な娯楽感が得られるのは食事の醍醐味だと思っていて。僕は、食はエンターテインメントだと思っています。

― でもその娯楽の間も、料理のことを考えていらっしゃるわけですよね。

もう昔から、そういうサイクルになってしまっているので苦ではないです。あと食事中は細かな分析みたいなこともしません。「美味しいね」とか「楽しいね」とか、単純に感じるだけですが、それがすごく大事なことだと思っています。

今後は世界中に、今よりももっと和食の魅力を伝えていきたい

― 仕事に対して心がけていることは何でしょう?

真面目さ、ですね。態度もそうですが例えば300人分くらいあるテーブルのお皿に、パセリを一つずつ置いていくと1時間はかかる。そんなときにいつも言い聞かせるのは「一人の人に一つのお皿」という言葉。これを呪文のように唱えてパセリを置いています。そうしないと気持ちが折れてくるんです。パセリの位置が変なところにあるお皿が、たまたま当たってしまったら、その人にとって料理が台無しじゃないですか。だからとにかく料理に対して、真面目に真摯に、ということですね。あとは楽しく作業をするということ。楽しいところでないと、新たな発想は生まれませんから。

― シェフとしての、今後の目標を教えてください。

おふくろの味や家庭料理など、日本の食文化がどんどん崩壊していっているので、日常の身近な食文化をもっと盛り上げていきたいです。あと海外のビッグメゾンのショーや、フォーミュラワンのオープニングパーティのバックステージなどでも和食が出されるように、和食の魅力を今よりももっと海外に広めていければいいなと思います。

― 最後に、山下さんが思う有能なシェフ、またはビジネスマンとは?

ひと昔前までシェフは、専門性のある仕事だと思っていましたが、今は料理を作るだけでなく色々なことができないといけない。決して深くなくていいから、ある程度感覚としてバランスよく料理にまつわる様々な他のこともできる人だと思います。今の社会、それは全ての仕事に当てはまることだと思いますね。

― ポール・スチュアートは1938年の誕生以来、品質と革新に対する厳格なコミットメント、そして誠実な態度を貫いてきました。同じように、山下さんは、旧き良き伝統を尊重しながらも革新を加えることで、先駆者として「新和食」というスタイルを発信し続けています。その裏側にあったのは、一つの料理に対する真摯な姿勢を忘れないということでした。そうした一つひとつの積み重ねこそが、多くの顧客の信頼に繋がっているのでしょう。

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クラシックな中にも、エレガントなムードを内包したメランジ調のブラウンハウンドトゥースジャケットと、上品な小花柄が大人な遊び心をプラスするブルーのプリントシャツを駆使した着こなしは、アズーロ・エ・マローネで紳士の王道スタイルに格上げ。ジャケットのウール×シャツのポプリンという、繊細な素材感の妙もこちらの着こなしのポイント。さらに、適度にラフな表情をたたえたカーキグリーンのコットンパンツは、シャープなテーパードシルエットでありながらもストレッチが効いているので、着心地も快適なのです。

PEOPLE PROFILE

山下 春幸 Hal Yamashita
料理人/オーナー/シェフ

1969年兵庫県生まれ。大阪藝術大学藝術学部卒業。海外で料理修業を積んだ後、 独自の視点・捕らわれない料理技法を用い、伝統的な日本のスタイルに今までにない斬新な組み合わせを取り入れた「新和食」を提案し、国内外から注目を集めている。また自身のレストランのほか、障害者支援ボランティア活動、政府関係のアドバイザー、全国各地での講演、また現在世界に150人ほどしかいないマスターシェフの一人として、その活動を世界に広めてパワフルな活動を行っている。

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