ひとつひとつの決断は自分一人で下す。―永里優季(プロサッカー選手/ライデンシャフトCEO)中編
  1. TOP
  2. style-session
  3. ひとつひとつの決断は自分一人で下す。―永里優季(プロサッカー選手/ライデンシャフトCEO)中編
style-session

ひとつひとつの決断は自分一人で下す。―永里優季(プロサッカー選手/ライデンシャフトCEO)中編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。今回のゲストはプロサッカー選手の永里優季さんです。弱冠16歳で女子サッカー日本代表に選出され、その後海外のビッククラブへの移籍を果たすなど日本の女子サッカー界を牽引してきました。なでしこJAPANでのW杯やオリンピックでの活躍は、皆さんの目や心に今でも焼き付いているのではないでしょうか。現在は、アメリカのナショナル・ウーマンズ・サッカーリーグ(NWSL)のシカゴ・レッドスターズに所属するトッププレイヤーと、自身で立ち上げた会社のCEOという二足の草鞋を履いている彼女。数々の決断を経験したからこそ感じられる、自立した女性としての魅力に迫りました。

Photo. Hideyuki Seta / Text. Daisuke Kobayashi / Edit. Pomalo Inc.


苦労や後悔は自分の今と過去を否定すること


― これまでのサッカー人生で苦労や後悔として心に残っていることはありますか?

苦労は苦労ではないですし、後悔をしたこともありません。もちろん、プレーの分析としては日々振り返りますが、ひとつひとつの選択や決断に対して苦労や後悔って言い出してしまうと今の自分ではなくなってしまうと思うんです。自分の過去を否定してしまうことになる。最終的な目標やビジョンがあれば、いいことも悪いことも全部正解の決断となるように頑張ろうと私は考えています。歴史もそうだと思いますが、やはり未来の決定は過去のことを知らなければできません。そう考えるようになって、海外でプレーする以上、歴史的背景や宗教なども勉強するようになりました。様々な人々とコミュニケーションを取る上でも、その人のバックボーンを知るということは重要ですからね。

― お話ししやすい永里さんの空気感は「過去を受け入れる」安心感から来るものなのかもしれませんね。コミュニケーションを取るのもお得意なのでは?

pattern_2
話しやすいですか、それは良かったです(笑)。でも、実は最初に代表に選ばれた時なんかは自分の心臓の鼓動が聴こえるほど緊張するタイプで。人前に出るインタビューでは全く話すことができませんでした。そばにいる大人の人たちが言うことをそのまま言っていたような……。プレッシャーはとても感じていましたね。でも、それも慣れなのかなって最近では思います。コミュニケーションだけでなく、したことのないことを取り組むのは誰でも緊張や不安があるものなので、場数を増やしていくことで緊張もしなくなりましたし、新しいことにも常にフラットな自分でいられるようになりました。苦手なことから逃げずにどれだけ新しい場所に踏み入ることができるかが大事ですね。

― 新しいことへの挑戦は決断のタイミングも重要かと思います。様々な決断をしてきた永里さんが考える決断のポイントとは何でしょう?

私の場合、大きな決断といえるのはやはり移籍でしょうか。例えば、ドイツのヴォルクスブルクからフランクフルトに移籍したのですが、そのヴォルクスブルクには半年しか在籍しませんでした。契約がまだ2年半も残っていたものの、環境と感じている自分の価値観とがうまく合わなくて。このままここにいるべきか、環境を新しくするのか、誰にも相談せずに自分のビジョンを信じてひとりで決めました。こういった自ら環境を変えるような決断は海外に行ってからの方がパッとできるようになりましたね。その時の自分の感情を大切にして決断して、誰に何も言われても関係なく自分の道は自分で決めるスタイルが完成しました。新しいことを始める時なんて否定がほとんど。どうせ何か言われるくらいなら、誰にも言わずに決断した方が物事はスムーズに運ぶものです。


今、なぜ「ライデンシャフト」を起業したのか


― 大きな決断といえば、昨年ご自身で立ち上げた会社「ライデンシャフト」。現役アスリートながらのチャレンジかと思いますが、なぜ今だったのでしょうか?

起業を考えるようになったのは2〜3年前のことです。周囲に会社を立ち上げる人が増えてきて、その中でも同級生が公認会計士・税理士の事務所を設立したことが大きなきっかけになりました。見ていてとても楽しそうなライフスタイルだなって(笑)。何事も興味関心からなんですよ、私の場合。新しいことを始める具体的な理由とかでなく、単純に「面白そう」「やってみたい」というように。やってダメならばそれはそれ、と結構あっさりとした性格なので。

― きっかけは興味関心ですが、お話を聞いているなかで潜在的に何かしたいことがあったようにも思えます。

スポーツ選手はほとんどの場合、マネジメント会社に所属して、誰かにマネジメントしてもらうというのが基本なんです。最初に考えたのは、そのスタイルを変えられないかなということ。私は海外と日本の双方での活動があるので、自由にスケジュールを組んでプランニングする、つまりセルフマネジメントにしたいと考えるようになったんです。ただそれも、その方が「性に合っている」と直感で思っただけなんですけどね。次に、会社はどういう風に作られるのかを知りたかったということ。会社に入ったことがないので、会社の仕組みや制度、その立ち上げ方まで率直に学びたいなと思いました。それで、「ライデンシャフト」の立ち上げに本格的に動き始めましたね。立ち上げ後は個人ではできない、会社だからこそより伝えられることがある、より動きやすくなる部分があると思い、会社を通じて自分の思うことを伝えていきたいと考えています。

― 会社名の「ライデンシャフト」はドイツ語で“情熱”という意味ですが、その言葉に乗せた思いがあるということでしょうか?

「情熱を持った人と仕事がしたい、もっと熱が溢れる世界にしていきたい」、そんな思いや希望を込めて社名にしました。私自身、情熱や誇りを持って仕事に取り組んでいく方がハッピーですし、そう感じる人たちと取り組んでいきたいですし、この思いを伝えていきたいですね。ただ、具体的な事業が定まっていなかった部分があったので、このオフで「永里優季はいったい何が得意で、何が不得意なのか」を知りたくて様々なお仕事を受けてみました。それで、私は子供が好きだなと。うっすらと思ってはいたんですが、教育の分野になってくるのかなと思っています。でも、誰かを雇って動かすよりも、自分が動きたいんです。私が動いて直接子供たちと接したい。それができるようにこれからもっと詰めていきます。女子サッカーが発展できるのが、一番の理想ではありますね。


(永里 優季様着用アイテム)
JACKET ¥39,000(+TAX)
BLOUSE ¥19,000(+TAX)
PANTS ¥23,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

永里 優季 Yuki Nagasato
プロサッカー選手/ライデンシャフトCEO

1987年神奈川県生まれ。小学生よりサッカーを始め、FC厚木レディースを経て、日テレ・メニーナ、そして日テレ・ベレーザへ。中学3年生時のU-18ユース選手権での優勝、最優秀選手賞の受賞で注目を集め、2004年アテネオリンピックのアジア予選メンバーとして日本女子代表に初選出。同タイ戦で代表戦デビューを飾る。2010年にはドイツ・女子ブンデスリーガ1部所属の1.FFCトゥルビネ・ポツダムへと海外移籍。その後、イングランドのチェルシーLFC、ドイツのVfLヴォルクスブルク、1.FFCフランクフルトといったビッククラブを経て、2017年よりアメリカNWSLのシカゴ・レッドスターズに所属。また、同年に株式会社ライデンシャフトを設立、そのCEOも務める。

27 件
ページトップへ