「事実は小説よりも奇なり」弁護士7年目で感じること。─菊間千乃(弁護士) 中編
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「事実は小説よりも奇なり」弁護士7年目で感じること。─菊間千乃(弁護士) 中編

時代が注目するキーパーソンにポール・スチュアートが迫る「STYLE SESSION」。今回のゲストは弁護士の菊間千乃さんです。フジテレビアナウンサーからの転職。メディアから法廷へと活躍の場を移したパワフルな姿に、同世代の女性はたくさんの刺激を受けているでしょう。真実とは?お金とは?幸せとは? 裁判の背景には必ずそういった永遠のテーマが潜み、弁護士はその部分に触れながら、どのようにして依頼人との信頼関係を築き、どのようにして依頼人の弁護をするかが要となります。その中で菊間さんが大事にしていることは何か。どうやら”経験”と”笑顔”がキーワードのよう。ご本人からそのあたりを詳しく語っていただきました。

Photo. Hideyuki Seta / Text. Yoko Yagi / Edit. Pomalo Inc.


依頼者の心を開き、信頼関係を築くこと


― これまで取り組んだ事件で印象に残っているのは?

弁護士になって7年目。まだまだ新人で手がけた事件が少ないので語れることは少ないですが、これまでの経験で感じたのは、舞台やドラマよりも現実のほうがすごい、ということです。アナウンサー時代は舞台や映画によく足を運んでいましたが、弁護士になってからはその足が遠のきました。忙しいこともありますが、事件の記録や証拠を見ているほうが、断然エキサイティングなんです。

皆さんは,裁判で真実が明らかになると思っているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。結局のところ、本当のことは当事者にしかわかりません。争いになれば、法廷で原告と被告が言い分を主張し合い、裁判所がどちらが言っていることがより本当らしいかを見極めて判断をするに過ぎないんです。もちろん弁護士は主張を根拠づける客観的証拠を提出し、裁判所はそれらを検討した上で判断をするのですが、それでも裁判で負けたからといって敗訴側が嘘をついていたということにはならないと思います。

私達弁護士は、依頼者の代理人ですから依頼者の話しをよく聞いて、依頼者の真実をより説得的に裁判所に伝えるにはどうしたらいいかを常に考えます。その作業は時に苦しみを伴いますが、何とも言えない達成感も味わえる、弁護士の醍醐味ではないでしょうか。

― 依頼者から本当の話を引き出すためにはどうしたらいいのでしょうか?

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信頼関係を築くことが何よりも大事です。チームとして、時には数年間にわたって戦うわけですから互いに信頼しあえなければ、いい結果を導くことは難しいです。 今は、ネットで弁護士を検索できますし、事務所のHPなどを見れば情報を得ることもできますよね。ただ,●●が専門だからということだけで、弁護士を選ぶかというと、それだけではないと思うんです。話しやすいであるとか、レスポンスが早いとか、一生懸命やってくれるとか、趣味の話しが合うでもいいです。たくさんいる弁護士の中からこの人と戦おうと思ってもらうためには、知識や経験だけではない、人間力も求められるのではないかなと。逆にそこが、若手がベテラン弁護士に勝負できるポイントでもありますよね。そしてここが、依頼者から話を引き出す力にも直結するような気がします。
依頼者の方との打ち合わせでいつも心がけていることは、「真剣にやるけど、深刻にならない」ということです。ロースクール時代に、東電OL事件の弁護団会議に参加した同級生が、その会議の様子をこういったんですよ。確かに、それってとても大切だなと思いました。依頼者の方はただでさえ不安で弁護士のもとを訪れるのに、弁護士が「これは大変だ」とか「困ったな」なんて顔をしたら、ますます不安になっちゃいますよね。弁護士に相談をすることで起こったことはしょうがない、これからどうするか、という前向きな考え方ができていくことが大事ですし、そのためには弁護士が深刻な顔をしてはいけないと思うんです。私はいつも、依頼者の方が事務所からお帰りになるときには、笑顔で帰って頂けるようにと思いながら打ち合わせをしています。瞬間的なものかもしれませんが、少しほっとした、落ち着いた、頑張ろうと思えた、そういう言葉をお聞きするととても嬉しいです。


インタビューで心得た、聞く力と話す力


― アナウンサー時代の経験は弁護士の仕事にも繋がっているのでしょうか?

新人時代に誰もがやる街頭インタビューが、今の仕事にも役立っていると思います。様々な人が行き交うスクランブル交差点でアンテナを張って、あの人だったら話をしてくれると信じて声をかける。断られることがほとんどで、まだ精神面が弱い新人アナウンサーには結構辛いんです。でも私、やはりスポーツ根性ですかね、何勝何敗みたいにカウントして、断られても平気で次行こう!と気持ちを切り変えるようにしたら、街頭インタビューがとても好きな仕事になりました。人が話したいと思うタイミングで声をかけるんです。

様々な番組でいろいろな方にインタビューしていくうちに、会った瞬間にその人のオーラが感じ取れるようになり、5分くらい話をすると何となく、どのくらいまで踏み込めるかっていう間合いがわかるような気がします。もちろんたくさん失敗してきた結果ですけれど。この感覚は人それぞれだと思うので、言葉で説明することは難しいのですが、とにかく失敗を恐れずに「もう一歩前へ」の精神で,相手に踏み込むことが必要かなと思います。そして大事なことは、自分が踏み込む以上、自分自身はどう踏み込まれてもいいですよとオープンにしておくこと。犬が大切な人にお腹を出すように,自分がその人を大切に思っていることを示す。そうしないと、相手の本音を引き出すことはできないのではないでしょうか。

― では、菊間さんにとって尊敬する弁護士とは?

いろいろと質問をして依頼人の心を探らなくても、依頼人の前に座っただけで依頼人のほうから次々とすべてを話してしまうような弁護士。例えるならば、神父様みたいな。いるんです、本当に! 依頼人との打合せでもほとんど「うーん」「なるほど」「そうなんだ」みたいな言葉しか口にしない。でも最後の最後で的確な質問をして、依頼人の真意を引き出す。その現場に実際立ち会ったことがありますが、本当にすごいです! そういう弁護士は,皆オーラがありますね。やはり様々な経験を乗り越えないとあの領域までたどり着けないんだろうなと感じています。私もあと20年くらい経ったら、ああいうオーラが出るのかな……。もっと経験を積んで精進しないといけませんね。
>>インタビュー前編
過去の成功体験が30代の自分を励ましてくれた。─菊間千乃(弁護士) 前編

>>後編に続く(2月15日(木)公開予定)


(菊間 千乃様着用アイテム)
JACKET (FIRST JACKET) ¥79,000(+TAX)
PANTS ¥43,000(+TAX)
BLOUSE ¥29,000(+TAX)

問い合わせ先/ポール・スチュアート 青山店 Tel.03-3406-8121

PEOPLE PROFILE

菊間千乃 Yukino Kikuma
弁護士

東京都出身。早稲田大学法学部卒業後、フジテレビに入社。アナウンサーとして活動するかたわら大宮法科大学院大学にて法律を学ぶ。2007年にフジテレビを退社。2009年に大宮法科大学院大学を修了。翌年、司法試験に合格。第64期司法修習を経て弁護士になる。現在、弁護士法人松尾綜合法律事務所に所属。趣味のゴルフが縁で、週刊「ゴルフダイジェスト」で”菊間千乃のスタートの時間ですよ!”の連載ページを担当。2017年、J.S.A ワインエキスパートの資格を取得する。

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